生命の樹(6/13)


「……よかった。ここでも私に反応してくれたわ」



ティランピオンを片付けた後、ルーク達はパッセージリングの前にたどり着く事が出来た。ティアが制御装置の前に立つと、制御装置が反応し、起動を始めた。

その際、澱んだ薄紫色の音素がティアの身体に吸収されるのをサクは見た。……だからといって、今彼女に何かしてあげられる訳ではないのが、少し歯痒い。

サクが僅かに表情を曇らせている一方、パッセージリングの上に展開された譜陣を見上げていたアニスがジェイドに尋ねた。



「やっぱり、総長が封じてますか」

「そのようですね。しかし……【セフィロトが暴走】……?」



ヴァンが封じたらしいパッセージリングの上に表示された、赤い【警告】という文字。文章を目で追うと、確かに【セフィロトが暴走】している事が記されている。



「なあ、赤いところを削り取るんだよな。この後も前と同じで良いのか?」

「ああ、はい。光の真上に上向きの矢印を彫り込んで下さい」



ルークの声に、ジェイドが我に返る。そしてルークはジェイドの指示を確認しながら、シュレーの丘のセフィロトと同様の作業を行い、超振動で無理矢理指示を書き込んでいく。

刻み終えると、書き込まれた文字が輝き出し、パッセージリングの遥か下から、記憶粒子が噴き上がってきた。うまくいったみたいだ。



『第四セフィロトと第三セフィロト……やっぱり、繋げておいた方が良いかな?』

「!そうですね……むしろ、繋げる巾でしょう」

「?どういう事ですの?」



サクとイオンの言葉に、ナタリアが首を傾げる。他の皆もどういう事だ?と、訝し気な表情を浮かべている。



「元々、セフィロトは星の内部で繋がっている構造なので、同じ様にパッセージリング同士も繋がっているんです」

『全てのパッセージリングが繋がっている状態が、本来の正常に機能してる状態だから……出来れば今までと近い形で作動させておいた方が、セフィロトも安定すると思うの』



けれど、今は起動を停止されているリングもあり、各パッセージリングは別々に起動している状態にある。暗に、セフィロトが暴走している可能性との関係性を匂わせてみたり。まぁ、暴走のは原因としてはミスリードになるけど。今後の布石としては必要になるだろうし。



「成る程……お二人の意見は、一理ありそうですね」



ジェイドが珍しく、感慨深く頷いている。私だけの意見だと怪しまれる所だが、イオンも同じ見解である事から、導師が知るセフィロトに関する共通の知識だと信じてくれている様子。まぁ、実際そうなんだけど。



『上手く利用すれば、他のセフィロトを同時に操作する事も可能になるしね』

「そういえば、アッシュの奴もそんな事を言ってたよな」



アッシュの言葉を思い出した様子のルークが、納得した様に呟く。その一方で、眼鏡のブリッジを押さえたジェイドの眼鏡が、キラリと怪しく光った。え、ひょっとして今の発言でまた怪しまれた?



「アッシュは兎も角、ヴァン謡将やサク様はセフィロトの操作方法について、随分とお詳しいですね」

『教団の禁書やネイス博士の本棚には、面白い本が沢山ありますので』



あ、ジェイドの笑みが引きつった。とまぁ、こんな風にジェイドの対処法は心得てるので問題は無いかと。さすがに乱用すると必要以上に怪しまれるから危険だけどね。

直接操作は出来ないけど、知識はあります。シナリオの。他には教団の最高機密だって調べれるんだぜ。導師の肩書きは本当に便利です。荷は重いけど。



「それで、何て書くんだ?」

「そうですね……では、第四セフィロトから第三セフィロトに線を延ばして下さい」

「第三セフィロトってのがシュレーの丘なんだな。やってみるよ」



セフィロトを示す二つの円が、線で繋がる。すると、第四セフィロトから光が流れていき、第三セフィロトと光で繋がった。

ケセドニアの降下が始まったのは、その直後のことだった。鈍い衝撃が、ルーク達の体を貫いてゆく。



「……降下し始めたようですね。念のため降下が終了するまで、パッセージリングの傍に待機していましょう」



制御盤を見詰めてそう言ったジェイドに、ルークは大きく息をついて腕を下ろした。



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