過去の罪(1/6)

タルタロスの艦橋にて。現在、中央の操縦席にジェイドが着き、窓際の操縦席にはそれぞれアッシュ、ガイ、アニスが座っている。ちなみにナタリアとイオン、そして私は操縦しないので安全の為席に座っているだけです。

此処に、ティアとミュウ、そしてルークの姿はない。ティアは魔界に留まり、ミュウはルークの傍を離れず、ルークは精神的ショックと同調フォンスロットを繋いでいる等の要因から昏睡状態。筋書き通りならば恐らく、今の状況をルークはアッシュを通して見ているのだろう。



「これだけの陸艦を、たった四人で動かせるのか?」

「最低限の移動だけですがね」

「ねぇ、セフィロトって、あたし達の外殻大地を支えてる柱なんだよね。それでどうやって上にあがるの?」



アッシュの疑問にジェイドが答え、アニスの質問にはイオンが答える。



「セフィロトというのは星の音素が集中し、記憶粒子が吹き上げている場所です。この記憶粒子の吹き上げを人為的に強力にしたものがセフィロトツリー……つまり、柱です」



ガイ曰く、要するに、記憶粒子に押し上げられるらしい。ジェイドも頷いた。



「一時的にセフィロトを活性化し、吹き上げた記憶粒子をタルタロスの帆で受けます」

「無事にいくといいのですけれど…」

「心配するな。始めろ!」



ナタリアの不安は、アッシュの一言により幾らか和らげられる。アシュナタですね。分かります。

アクゼリュスを支えていたセフィロトの上にタルタロスが停止すると、陸艦に設置されていた音素活性化装置が起動し、泥の海から微かに湧き出る記憶粒子が活性化を始める。大樹が枝を広げるように上空へ吹き出す記憶粒子の流れに乗ってタルタロスは上昇し、かつてアクゼリュスにがあった場所に開いた穴から、外郭大地の海に着水した。



「うまく上がれたようですね」

「ここが空中にあるだなんて、信じられませんわね……」



障気の泥海ではなく、綺麗な青い海が窓の外に広がっているのを確認し、ジェイドとナタリアが言った。

かなり揺れたけど、皆さんピンピンしてます。私は一瞬酔うかと思ったよ……



「外殻の穴の方に見えた、あのでっかい光の樹がセフィロトなんだよね?あれで外殻大地を支えていたなんて信じらんないよ」

「ええ。……でも私達は、あれに押し上げられて魔界から脱出できたのですわ」

「ホント、よく戻って来られたね〜♪」

「……理論は間違っていなかった。成功するに決まっている」

『アッちゃんカッコいいー!』

「う…うるせぇ!ていうか変なアダ名を付けんじゃねぇ!!」



何処と無く得意気な表情のアッシュが可愛いかったので、軽く茶化したら怒られた。照れ隠しがあからさま過ぎるって。シンクとはまた違ったツンデレ具合だな。

ちなみに、アッちゃんの元ネタは言わずもがな。武勇伝デンデデンデン…あ、もう古い?



「結果、上手くいっただけだろ。失敗したら、俺達皆死んでたかもしれない」

「ガイ、あなたル……いえ、アッシュに対して刺がありませんこと?」

「……こいつは失礼」



そんなアッシュを称える雰囲気(ちょっと違う)を害するのは、何処か刺のあるガイの言葉だったり……狙ってないよ。ファンタジアの主人公じゃあるまい。

ガイの態度に、ナタリアが悲しそうだ。注意しても改める気は無いようで、ガイはソッポ向いてしまった。あ〜…アクゼルークとは少し異なる、剣呑な空気。



「ガイ……。またそんな……」

「ナタリア!放っておけ。俺は別に構わない」

「アッシュ……」

「それで?タルタロスをどこへつけるんだ?」



やはり投げやりな感じで疑問を口にしたガイに、アッシュはガイを含めた全員に淡々と告げる。



「ヴァンが頻繁にベルケンドの第一音機関研究所へ行っている。そこで情報を収集する」

「主席総長が?」



驚き混じりに、アニスがアッシュに聞き返す。



「俺はヴァンの目的を誤解していた。奴の本当の目的を知るためには奴の行動を洗う必要がある」

「私とイオン様とサク様はダアトに帰して欲しいんだけど」

「こちらの用が済めば帰してやる。俺はタルタロスを動かす人間が欲しいだけだ」

「自分の部下を使えばいいだろうに」



ガイラルディア伯爵!!目が恐いです!アッシュを睨まないで!!角度的に私迄睨まれてる様な気分です!!



「それは出来ない。俺の行動がヴァンに筒抜けになる」

「良いじゃありませんの。私達だってヴァンの目的を知っておく必要があると思いますわ」

「ナタリアの言う通りです」

『右に同じく』

「……お二人がそう言うなら協力しますけどぉ」



ナタリアは賛成らしく、イオンも微笑んでいる。ちら、とアニスから視線を向けられたが、首を竦めてみせれば、アニスも諦めたようで渋々同意した。



「私も知りたいことがありますからね。少しの間、アッシュに協力するつもりですよ」

「……」



この時、ガイは仲間達の言葉を聞いて、何か考え込んでいる様子だった。やはりルークを待っててあげる巾だったかと後悔しているのか、今後の自身の身の振り方を迷っているのか。きっと、その両方だ。



「ベルケンドはここから東だ。さあ、手伝え!」

『嫌だ』

「じゃあ今すぐ此処で降りろ」

『この海のド真ん中で!?なんて横暴な!!』

「その言葉をお前が言うか!?」



理不尽な!!とアッシュに抗議したら、ちゃんとツッコんでくれた。安心して欲しい。私は自分の権力に託つけた横暴さはよく自覚している。なんせ確信犯ですから。

……暫くの間はこんな感じで、ガイとアッシュの間に生じるギスギスした空気を多少和らげる事が出来たら良いんだけどなぁ…。

ていうか、私にはタルタロスを動かす事に関しては、手伝える事が無いんだけどね。そもそもの話。



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