巡回中に突然降り出した土砂降りの雨。

朝のお天気コーナーでは一日中晴れ予報だっただけに傘など持ってはいなかった。

そもそも雨予報ならば徒歩で巡回などしていない。


「…チッ、ついてねェな」


隊服が無駄に水を吸って重い。

一先ず何処かで雨宿りでも、と周囲を見回す。


「土方さん!」
「あ?」


後ろから声をかけられ振り向けば、そこに立っていたのは買い物袋を両手にぶら提げた彼女。


「なまえ、お前ビショ濡れじゃねェか!」
「土方さんもじゃないですか」


お揃いですね、などとクスクス笑う。

おそらく買い物帰りに雨に降られて「どうせ濡れたからもう良いや」と歩いてきたところだろう。


「ったく、女は身体を冷やすもんじゃねェぞ」
「はい、でも家もうすぐそこなので。良かったら雨宿りして行きませんか?」


確かに、コイツの家はすぐそこだ。

まだ勤務中だがこの雨では巡回どころではない。


「悪ィな。オイ、それ貸せ」
「あ、ありがとうございます」


片手で彼女の手から買い物袋を奪い、もう片方で冷え切った小さな手を掴むと少し足を早めて家へ向かった。