籍を入れた夜。

明かりを消した部屋のベッドに二人で座る。
閉められたカーテンの隙間から街灯の光が差し込んでいるから、薄暗くてもお互いの姿はちゃんと見える。


「なまえ…もう、良いんだよな…?」


静かに問い掛けると彼女は少し躊躇いがちに小さく頷いた。

風呂上がりの彼女からは俺と同じボディソープとシャンプーを使ったとは思えないくらい甘い匂いがしてクラクラする。
お揃いのパジャマを着て ちょこんとベッドの上に正座している姿が可愛くて、本当の本当にもう俺の奥さんなんだ…とゴクリ、唾を飲み込んだ。


「ずっと、大切にするからな」
「不束者ですが、よろしくお願いします」


三つ指をついた彼女がエヘ、と照れたように笑って顔を上げた。


「あの…炭治郎、今まで私の我儘に付き合わせてごめんね」
「何がだ?」
「だって…炭治郎だって男の子なのに…その…ずっと出来なくて…が、我慢してた、よね…?」


少し気まずそうに目を逸らす。

そう、俺達はまだ一度も交わったことがない。
妊娠が心配だから結婚するまでそれがお預けというのは交際を始める前になまえが言っていたし、俺も了承しているのだから別に気にしなくて良いのに。


「俺はなまえと一緒にいられるだけでも幸せなんだから、気にしなくて良いんだぞ?」
「ありがとう…でも、もう我慢しなくて良いからね?だって私もう竈門 なまえになったんだから赤ちゃん出来ても大丈夫…わっ!?」


可愛いことを喋り続ける彼女が堪らなく愛しくなって、思わず抱き締めた。
距離が近くなったせいで先程よりも甘い匂いを強く感じる。


「出来るだけ、優しくするから…抱いても良いか…?」


唇同士が触れ合うくらい顔を寄せて囁くと、薄暗い部屋でも分かる程 顔を真っ赤に染めた彼女が頷いた。


今夜、彼女のすべてを手に入れる。