「ただいま」 「義勇さん、おかえりなさ…い…」
鍵の開く音が聞こえたので玄関まで迎えに行くと、若干疲れた顔の恋人。 そしてその手にぶら下がるパンパンな紙袋が視界に入ってきて、思わず"おかえりなさい"が尻つぼみになった。
「どうした?」 「今年も結構な量ですね…」
鞄と上着をいつものように受け取りながら、つい口を尖らせてしまう。
「机や下駄箱やらに勝手に置かれていてどうにもならなかった」
…彼はモテる。 いや、モテるなんてもんじゃない。 凄くモテる。 こんな素敵な人をみんな放っておく筈がない。 仕方ないことなんだって、ちゃんと分かってる。
でも…うーん… 他の女の人からの贈り物ってやっぱ複雑だなぁ。
…なんてぼんやり考えていると、ガサガサ包みを開ける音がした。
「え、今 食べるんです…むぐっ、」
甘さが口の中に広がる。 義勇さんの指ごとチョコを押し込まれた。
「なまえはチョコが好きだろう?」
確かに好きですけども…! 口の中にまだチョコと指が入ったままなのでモゴモゴしながら目で訴える。
「ん?ああ、安心しろ。既製品以外捨ててきた」 「んっ…ちが…」
違う、そうじゃない。 言おうとしたけれど、ツゥ…と口蓋を掠めてから引き抜かれた指を目の前で舐められて口篭る。
「俺はこれだけで良い」
熱くなった頬をするりと撫でられ、そして深く口付けられた。
チョコより、甘い。
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