「トリック・オア・トリート」
「…んぇ!?」


ソファーに二人で腰掛けてぼんやりテレビを見ていた20時。
ふと思い付いて、ついさっきまでなまえが頭に着けていたオオカミ耳のカチューシャを装着してお決まりのセリフを言ってみた。
すると彼女は目をパチパチさせて固まっている。


「お菓子、今 私が食べ終わっちゃいそうな飴で最後なんだけど…」


…戸惑うような表情も可愛い。
もう家の中にお菓子が無いことなんて匂いでとっくに分かってるさ。

コロコロと口腔内で飴を転がす音を聞きながら少し距離を詰める。


「お菓子くれなきゃイタズラするぞ?」
「ごめん炭治郎、何も持ってない…」


それはそうだ。
飴を口に入れたのを確認してから あのセリフを言ったんだから、そうじゃなきゃ困る。


「がおー、なんてな…」
「ん…」


スルリと頬を撫でて唇にそっと触れるだけの口付け。
でも、それだけで終わらせたくない。


「……んぁ…っ…」


頬を撫でた手をそのまま後ろへ持って行き、ツゥ…と耳殻をなぞれば可愛い声が漏れた。
その瞬間、少し強引に隙間へと舌を捩じ込む。

甘い。

歯列や口蓋、舌をゆっくり焦らすように舐めていく。


「…んぅ…、っ…ふ、ぁ…たん、じろ…」


弱々しく胸を叩かれて唇を離すと、肩で息をしながら潤んだ目を向けてくる。

ああ、今日はもう我慢出来ないかもしれない。


「なまえ、ベッド行こうか」
「ぁ…」


クタリと力の抜けた身体を抱えて寝室へ向かった。


オオカミだから"待て"はしない。