「兄貴!ついに奥州の独眼竜が北を統一したそうですぜ!」
俺のところに届いた情報に、思わず口元が緩んだ。約5年前。
俺のところに来た当時はあまり名を知られていなかったかの竜との見合い。
まぁ、当事者である俺とそいつが両方いないんじゃ見合いはつぶれたが…
だが、あの時…
店先で団子を食ってる嬢ちゃんがまさか奥州筆頭独眼竜だなんてだれも思わねぇだろ。
だからあんなことをいっちまったがあいつもあいつで…
ここは奥州筆頭も、その腹心もよく来るところ。なんて、本人がいうことじゃない。それに、普通に男の手をひくたぁ驚いたもんだったが…
案内された場所は町を見下ろせる小高い丘。そこから見下ろした町はひどく民の笑顔と笑い声に包まれていて、支えあって生きている、活気づいた町だった。思わず漏らした声は、その町がひどく俺のあこがれになったからだ。
自分よりも年下が…こんなすげぇことをやってのけたと…
まぁ、張本人は隣にいてあっさり長曾我部だろ?と聞かれてお互い正体をさらしたが…
『奥州は、絶対に日ノ本一…平和な国にしようって。』
あの時の言葉が、鮮明によみがえる。
あぁ、そうか、
お前はその夢の実現のために走り回ってるんだな…。同盟を組んでるこっちとしては脅威じゃねぇが…
それは、あいつが周りの人間に「男」としてとおってるからだ女とばれたら…それこそ無理な縁談を組まされたりもするかもしれねぇ。あいつの場合逃げそうだが…
そうしたら…
「竜をさらう、鬼、か…」
ことが収まるまで俺ぁ竜神様の門番でもしてようかね。
執筆日 20130814