あぁ、うまくいった…


思わず口元が吊り上がる。
目の前にあるのは血の池。

政宗殿の屋敷の池をこのようにしてしまうのは多少心が痛んだが、片倉殿にはしっかりと許可は取ってある。

槍を振るいついた血をはらい落とす

その瞬間、後ろでどさりと何かが落ちる音がした



「何…してんだよ…っ」



振り返れば、血濡れた俺に戸惑いの視線を向けるいとしい竜の姿。
そしてその眼が向けられるのは物言わぬ躯の浮かぶ池。


『雪』とふらふらと名を呼びながら池に近づいていく。

あぁ、俺の名だけを呼べばいいのにそれすらせぬ、
そうか…堕ちたのならば…



『雪…雪…っ!』

「なんでござろう、」

『っちが、おまえなんかじゃ…っ』



名を呼び、手を伸ばした。
その手をつかみ引き寄せれば振り払うように言われるが、無視。
こうなればただのおなごだ。

戦場を翔る竜には程遠い



『んで、なんでこんなこと!』



カタカタと震えて声を出す。
くすんでいる左の眼から一筋の涙がこぼれおちて…



「政宗殿…。」

『っ私の名を呼んでいいのは雪だけだ!!』



バチンっと頬がたたかれる。
ひりひりと多少痛んだが、手は離さなかった。

片手で持っている槍を地面に突き刺せばびくっと体を震わせた



「あぁ、今の貴殿は簡単に殺せそうだ。」

『っひ』



つぶやくように言ってガッと髪をつかんだで顔を上げさせた。
痛みに表情をゆがめるが、そんな顔も、またよい



「竜よ、堕ちた場所が悪うござったな」

『っゆ、き、むら!』



かりっと佐助に作らせ奥歯の奥にひそめておいた丸薬を割る。
そしてそのまま否定を叫ぶ政宗殿の呼吸を奪った。




『っに、を・・・っ』

「安心してくだされ、毒にはござらん」



丸薬を押し込み、飲み込ませて口を離せば盛大に咳き込み、崩れそうになった体を横に抱きなおした。

そうすれば力の入っていないその手で押し返されるが関係ない、




ただ、口元が吊り上がるのだけを感じた



執筆日 20131004



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