「梵だ…っ梵がいる!」
『っ何だってんだよ、べたべたすんなっ』
「梵だ梵だ梵だ梵だっ!!」
小十郎に案内されてついたのは白石城。
それは私が小十郎に与えたものだった。
まぁ、のつど青葉城に滞在していた小十郎だったが…
そして現れた成実も…私よりも年下のはずなのに、明らかに年上で、
「仕方ありません。政宗様はこの世界にはもういないお方なのですから。」
『What?』
「…っ梵は二年前にね、死んだ…っ
忍びの毒にやられて」
『…』
そして、言われた言葉にゆるりと目を見開く。
死んだ、私が…
あぁ、そうか…
『納得、そうか、私はこのまま死ぬんだな。』
「っ梵?」
『はは、だから死ぬ間はここいろってか、めんどくさい神様だぜ。』
未来に来た。
それも、己が死んだ後の未来に。
成実が驚いて腕の力を緩めた隙に立ち上がり抜けだす。
驚いたように成実が声を上げたが関係はない。
そのまますたすたと歩いて、障子を開けた。
そうすれば、そこには小十郎がいて…
その手には私が好きな甘味がいくつかおいてある、
「どうかなさいましたか?」
『関係ない。』
すたすたとそのまま小十郎の横を通り過ぎて歩いていく。
二年…ということはまだいるだろうか…
厩にいても、あいつがいるなら届くはずだ
ピィイーーーっ
指をくわえて息を吐く。
高々鳴り響くその音に、あいつは反応してくれるかと…
「っ政宗様!!」
聞こえて来た肥爪の音にはっとした、
あぁ、やっぱりお前はまだ生きていたんだな、なんてうれしくなって、
小十郎の言葉を無視に縁側を走り、駆け寄ってきたその青毛の馬に飛び乗った。
『っ行け、疾風』
ここには、いたくないから
執筆日 20130910