−−−ねぇ、世界樹、あなたは何が望みなの
そう疑ってしまいたい光景が目の前にある。正直お金には苦労していなかった。スタートはかなりイージーモードだったと思う。
どういう理屈か、世界の引き継ぎで私の持ち物は変わっていない。正直資材やいらない武器を売るのは痛くない。でも身体をなまらせたくなくて、ガルバンゾの外にある森で人にばれないように魔物を倒して訓練していた。
そんなことをしていたらどうやら誰かに見られたらしい
現在進行形であのときユーリにちょっかいをかけられていた少年が、私の元に来ている。
なんでもギルドの仕事の一つに魔物討伐があるらしく、今、人手が足りないから手伝ってほしい。とのことだ。
ここに来てから知ったのが、ユーリは時折騎士団と問題を起こすらしい。とは言っても彼らの理不尽な要求を突っぱねるぐらい。彼らしいと言えば彼らしいのだが、おかげでフレンにまで会ってしまった。
「い、今、ユーリもジュディスもいなくて、お、お願いします!」
それはさておき、今はこの現状をどうにかするかだ。でも、彼は物語には存在していないから、本当に初めましてで…話に聞いていたユーリのギルドの人。なんだろうとは思う。
こんな小さな子まで戦っている。と思うと少し複雑な気持ちにはならなくもないが…。まぁここで運を売ることは悪くない。
『私はかまわないわよ』
だから私の口から出たのはその言葉だった。…結局、今も昔も私は結局困ってる人を見捨てられないのだ。
私の返答に彼は「本当?!」っと目を輝かせた。素直な反応に苦笑いしてしまう。話に聞くと 彼はこのギルドの頭領らしいけれど、
「やっぱりユーリの言ってたことは本当だったんだ!」
そうは思ったけれど突然言われた言葉に固まる。出てきた名前が予想外だった。
『ユーリ?』
「え、うん!ユーリがシルヴィアさんは強いから何かあったら頼れって」
ああ、彼に見られていたのか、なんて納得。
彼も一緒の戦闘狂だった。ふと思い出して笑いそうになってしまう。
あぁ、でもその力に私は何度も助けられた。最初のころはたくさん、つらいこともあったけれど…彼の剣術にあこがれたし、たくさん一緒に任務にも出た。ぶつかったこともあったけれど、最後まで信じて送り出してくれたヒトだった。
…だから…二回目に廻った時の、あのつらい記憶が忘れられない。それでも懸命に世界を救って…元の私のいた世界へ帰してと願ったけれど、またふりだしに戻った。
正直手を離してしまいたかったが、もう私にはこれしかないんだと思って、途中で感情を殺した。気味悪がられて、それでも笑って…最後には、消えてしまって、もうあきらめてしまいたかったけれど…
どうせ、廻った。
『それで、どこで何をするの?』
「あ、えと、ガルバンゾの外にある森に魔物が大量発生してるんだって、それで、その討伐に。」
『そう。』
現実逃避を経て、彼に聞いたけれど、ふっと思い立ったことがあり、少年を見れば「シルヴィアさん?」と首を傾げられた。…そう、それ。
『私、君から名前きいてないわ』
「あ!!僕カロル・カペル!」
『カロル、ね。よろしく、カロル』
「うん!」
あぁ、でもこの子は、本当に素直な子なんだなって…。思わず微笑んでしまった。こういうときも私にはあったのかな、なんて。初めてのころは…なんて考えてやめた。何度考えても仕方のないことだ、戻れないのだから。
『さて行こうか、カロル』
ベットに立てかけておいた双剣をとって腰にさす。
それから外しておいたグローブを止めながら部屋から出れば、カロルはきょとんとしていた。「どうしたの?」と聞けば「不思議な剣だなって思って」と、返される。
不思議な刀。
それはそうだ。体の装備はレディアントではないけれど、剣は双剣士のレディアントである朱雀刀と青龍刀。なかなか見るものじゃない。
『ずっと昔から使ってるから使い慣れてるの。』
するりと柄を撫でて告げる。
レディアントだから折れることはないと思うけれど。そろそろ耐久性に問題が出そうで怖い、と考えるのは正直本心だ。合成を使ってスキルをかなり上げているものだから手放すのは惜しいところだが、もし駄目になったら海賊仕様になるだけである。
…拳銃苦手だけど。
*-*karoru Side*-*
今から少し前に、僕たちの前に不思議な女の人が来た。
普通にしてれば目立たないだろうその人は、腰に一本の剣を差してて、傭兵かなぁなんて思ってたけど、そんな彼女をユーリが引き止めてびっくりした。
でも、ユーリはたまに懐かしむように話してくれた女の人がいて、その人が銀髪の女の人だから、もしかしたらそのヒトが帰ってきたのかなぁなんて思ったんだ。
最近、いつにもましてユーリがそわそわしてたから彼女から手紙が来たんじゃないかって。
そしたら、空が光って…ユーリが子供みたいに目を輝かせていた。
それから少しして、近くを「アドリビトム」の船が飛んでいくのを見た。正直珍しいなと思っていたけれど、もっと珍しかったのはそのあと。
ユーリが、一人の女の人を呼びとめていた。
だけど、引き止めた彼女からでたのはユーリを知らない、という言葉で…。
彼女と別れたあと、ユーリは少し落ち込んだけれど彼女が『私そこの宿に泊まろうと思ったの』とさした宿はユーリの知り合いがやっている宿で、次の日には果物をたくさん持って宿に突撃していってて、エステルは不思議そうに、リタはあきれてたけれど。
レイヴンとジュディスはどこか暖かい視線をユーリに送っていた。
たぶんユーリは気が付いていない。
でも、僕でもわかる。
ユーリはきっと、彼女に…シルヴィアさんに特別な感情を持ってるんだって。
けど、まさかユーリもジュディスもいない時に魔物の討伐の依頼が来るなんて思わなくて、思わず、シルヴィアさんを頼ってしまった。簡単にOKをもらえたのはすごくびっくりしたけれど、
『カロル!』
「う、うん!!」
双剣を使うシルヴィアさんの動きは自由で、余裕に満ち溢れてて、身のこなしも軽くて、まるで踊っているみたいに見えた。
それに、どこか…どこかユーリを見ている見たいな錯覚も起きたんだ。
本当に…赤の他人じゃないんだろうな、って雰囲気。
だけど、部屋にいたシルヴィアさんの手には今はグローブで隠れてるけど、左手の薬指にはきれいなシルバーのリングと、少しサイズの大きめなリングがはまってた。
でもユーリにははまってない。
それを見ると、なんだかすごく複雑な気持ち。
ユーリがそれを知っているかはわからないけれど、お城から戻って来たら教えてあげようかな、なんて考えた。
『…この森は、まだ星晶があるのね。』
なんて僕が考えていたら突然、シルヴィアさんがそう言ったんだ。
二対の剣を鞘に納めて、魔物がいないか周囲を確認しながら言っていた言葉だとは思ったけどいきなり、星晶?ってかなり疑問に思った。
シルヴィアさんはガルバンゾに来てまだ日が浅いんだっけって思って「ここらへんは採掘されないんだよ」って伝えれば『どうして?』って僕に聞いた。
「ここらへんは、希少な動物が多いんだ。それにここらへんには世界樹の根が通ってるから星晶っていうよりもマナのほうが多いんだと思うよ」
『…マナ、そっか…世界樹はいろんなところに根を張っているものね…』
あぁ、でもどうしてだろう。ふわりと一瞬だけ風が吹いた。
その時に、シルヴィアさんの髪が、長く見えたのは、なんでなんだろう…
Re20210121
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