#Side Kanonno
空に浮く城に行ってみたいと言ったのは私。
シルヴィアには内緒にして来たいとおもったのは私はきっとあの銀色のヒトを悲しませてしまうとおもったから。
だから、一緒に来てくれるように頼んだのはクラトスさんとアーチェとフレンさんだった。
本当はユーリさんにも声をかけたかったのだけれど、エステルさんはユーリさんと他の女のヒトがはなすのがあまりみていたくないヒト、らしいから声をかけられなかった。
多分、ユーリさんのこと好きなんだと思うけど、あれは完全な独占欲というやつだと思う。
最初からあの調子だったから、船のなかではすこし浮いてしまっている存在でもあるし、でも同じ王族の人たちとはふつうなのになぁってすこし残念。
「カノンノ。私別の道探してくるね!」
「そうだね。まだ君は病み上がりだし、クラトスさんと一緒にここで待ってて?」
アーチェとフレンさんがそう言って道を探しにいってくれた。だから今私はクラトスさんと二人きり。
今シルヴィアはなにやってるんだろう。とそう考えながら世界樹をみていれば「カノンノ」とクラトスさんに呼ばれて振り替える。
「この任務。もしシルヴィアが禁止令を出されていなかったら一緒に来たかったか。」
「そりゃそうですよ。シルヴィアに、もっとたくさん話をききたいですから。でも、きっとシルヴィアと一緒に来ちゃうと、ジュディスさんから聞いたディセンダーの壁画のところにはいけないから、」
「ディセンダーの壁画をお前はみたいのか?」
「ずっと気になってることがあるんです。だから見に行きたい。シルヴィアの話を聞いたとき、あの子、すごく悲しそうに話してたから、それいじょう聞けなかったし。」
クラトスさんの質問は単純なこと。
たしかにシルヴィアと来たかった。でも、シルヴィアがいたらもっと細かく確認したいことができないかも知れない。
それにここに来ていることは内緒にしてある。
もしかしたら、シルヴィアは知っているかもしれないけれど、私は私の知りたいことのために、ここに来るって決めていたから。
「なぜ、この面子だったのだ」
「うーん。クラトスさん全部知ってそうでしたし、フレンさんは私の知らない世界のシルヴィアをしっているから聞いてみたかったんです。」
「そうか。」
「クラトスさんにも見せましたよね、シルヴィアにそっくりな絵。私、ルパーブ連山でシルヴィアにあったときから、ずっと、待ってたようなそんな気がしたんです。本当は、一緒に来たかったけどでも、自分の目で確かめないといけないことたくさんあるだって。」
まっすぐ前を向く。
フレンさんたちはきっとすぐに戻ってくる。
そんな予感がしているのは、きっと予感なんてそんなものじゃなくて、私が知らない知っていることのひとつなんだとおもう。だから、早くと、そう思ってしまうんだ。
「カノンノ。」
「はい?」
「私が知っているシルヴィアの話を、してやろうか。」
「え?」
だから、突然クラトスさんがいい始めたことに驚いた。
クラトスさんの知っているシルヴィアのこと。たしかに、シルヴィアが船に一度のったとき、クラトスさんは昔にお世話になったヒトだってそういっていた気がする。
「私のしっているシルヴィアは世界の再生と共に、その場所にうまく馴染めず、笑いながら消えた。」
「え。どういうことですか!」
「自然の植物と一緒だ。環境の変化についていけなかった。それを、「あいつ」が一番悲しんでいたんだ。」
まっすぐ、青い空と世界樹をみつめて、告げるクラトスさんはひどく、そのころを懐かしんでいるように見える。
あぁ、本当にシルヴィアのことを、クラトスさんはしっているんだ。
だけど、今シルヴィアは生きているのに、世界が今、危機にひんしているのに、どうしてクラトスさんはまるで未来のことのようにいうのだろう。
それだけが、不思議でたまらない。
*Side Flen
「あの、フレンさん。」
シルヴィアとよく一緒にいる姿を見る僕にとっては見慣れた色の髪色をもつ少女。
ユーリはエステリーゼ様とジュディスと一緒に任務に出ていたから僕はあてがわれていた自室で武器の手入れをしていた。それこそ、アンジュに頼んでシルヴィアとユーリと一緒に任務に出てみたいとそう思ったから。
多分、しばらく無理だろうけれど、実力主義なこの場所でたしかな実力があれば、彼女を任務に連れ出せるかななんて淡い期待もあるし、なにより、僕がシルヴィアとユーリ、二人の戦いかたを見てみたいとそう思ったのもある。
「どうしたんだい、カノンノ」
「あの、お願いがあって。」
なんて声をかけられたのは、すでに一時間以上も前だ。それから場所を移動して、そして空の上に現れたヴェラトローパというその場所を進んだ。
アーチェというエルフの少女は空を飛ぶこともできたし、魔術の才も優秀で正直驚いた。のだが、どうやらエルフという種族は見た目に反して長生きらしいとそう聞いたのはクラトスさんからだ。
彼の剣さばきもかなりすばらしいとおもう、
「シルヴィアってガルバンゾではどうやって暮らしてたんですか。」
「あ、私もちょーきになる!」
「シルヴィアは実質、傭兵だってなのって過ごしていたね。頼まれれば彼女ができる範囲でいろんなことをやっていたよ。」
先頭を歩いている僕とカノンノ。
そこに加わって後衛にいたアーチェ。かけられた話題は、彼女たちが知らないであろう、船の外で暮らしていたシルヴィアのことだった。
まだそんなに時間はたっていない。
「僕はユーリ経由で知り合ったんだ。そのあと何度かお茶したり、さすがに剣を交えることはなかったけど、よくギルドの手伝いで魔物を狩っていたりしてたっていうのは聞いたかな。でももっぱら料理とか、店番とか、そういう仕事のお手伝いをしていたって聞いたよ。」
「へぇ、なんか以外に普通だったんだね。」
「私もはじめて聞いた。」
「はは、だろうね。ディセンダーである彼女がそんな普通に暮らしているなんてきっと誰も思わないさ。でもそれはきっとシルヴィアの夢だったんだろうね。」
ーー『普通に生きてみたい。この世界の中で当たり前のような幸せを手に入れたくて、特別特化したような幸せじゃなくて、愛したヒトと世界樹を眺めながら子供を育ててみたい。救世主とか、英雄とかそういうのにはならなくていいから当たり前にヒトみたいに生きたいの。』
恋い焦がれる少女のように、叶わない夢を求める聖女のように。
本人は絶対に気がついていないだろう、泣きそうに笑っていたシルヴィア。あぁきっと彼女は生まれたときから世界のために死ぬんだという覚悟を持っていた。だから、できる限りの時間を普通に、そして生きた証を残そうとあの里を作ったんだろう。
あの狭い木の箱のなかも彼女が譲って回ったという私物もいつか誰かが思い出してくれるようになんて少しの期待をしていた。
「シルヴィアはきっともどれないって思ってるんですね。ディセンダーの伝承みたいに。」
「多分ね。僕もそう思うよ」
ディセンダーは世界の危機が去れば世界樹に還る存在。誰よりもそれを知っているのも彼女なんだろう。
だから、普通に生きたいと願っていた。それだけを願ってあの場所にいたんだ。
それが今、世界の危機に比例して彼女の体が蝕まれてる。それに気がつかない民がいる。今もなおディセンダーが出現しないかと待っているヒトもいる。
もうとっくに彼女は苦しんでいるのに。
「(僕はただ、ユーリとシルヴィアが一緒に笑えれば、なんておもってる)」
友人である彼女にそこまで思うのはきっと彼女をずっと待っていた幼馴染を見ていたからだ。
190419
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