ミラとジュードがルーティとルカと一緒にアルナマック遺跡に向かったと聞きつつ、甲板に積み上げられていくたくさんの植物の緑の匂いのなかにいた。
本来「ディセンダー」が向かうはずの任務。
確か初めて「レディアント」の言葉を聞いたのもその時だった気がする。
今回は、関係なくなってしまったが。
お留守番の私はひたすらドクメントの採取中。何故か私の横にはとある男がいる。
今回初めてあってから大体敵対されている気がしなくもないのだが、それは私の得体がしれないヒトだから。
それは国の上にたつものとしては警戒しなければいけない。最初ぐらいだった気がする。普通に話せたのは
「シルヴィア。」
『はい、なんですかカーティス大佐。』
私の横で私とおなじようにコピーロッドを手にしながらファイルにチェックをいれていくのはなんといってもあのジェイドだ。かつてないほどに彼とは険悪な関係と言っていいんだろうが、この仕事を先にしていたのは私であるし、このロッドは研究室にいるハロルドたちからしか借りられないからジェイドはそれをわかっていてこちらに来たんだろう。
「あなたはずいぶんと可愛いげがないですね。ファミリーネームはなれないのでそうよばれて戦闘中に振り替えれなかったらどうするつもりです?」
『別にあなたに助けを求めるほど弱い自覚はないので必要のないことですね。』
呆れたように告げられる言葉だが実際ジェイドと共にこれから任務につくことはない。これから何度だってそうだ。
「…本当にあなたは私ににていますね。」
『はぁ?』
「あっはっは、そんな嫌そうな顔をしないでください。事実なのですから。」
『嫌だもの、』
「おやおや嫌われたものですね。」
そりゃ「初対面」で槍向けられればね!
にっこりと笑って距離をとるために別の荷物が積み上がっている方へ行く。かんかんっと甲板が音をたてるがそんなのしったこっちゃない。
「誰にだってできないことはありますよ。どんなに天才でも秀才でも。」
『ついてこないでもらえます?』
足を止めて振り返れば彼もまた足を止めてシルヴィアを見ている。強めの風に目を細めて眼鏡を押し上げたその指先。
「あなたは一人で何を抱えているんですか?」
『…何をいっているのか理解できないわ。』
昔、彼女も同じ色だった瞳がレンズ越しに交わった。
怪訝そうにジェイドをにらむシルヴィアに彼は「無自覚ですか。」とあきれたようにため息をつく。無自覚もなにも、これは一人で抱えていくものだとシルヴィアは納得しているからこれ以上どうしようということもない。
「あなたは自分の命を軽視しすぎです。アルナマック遺跡でのことで怒っていらっしゃるのであればそろそろ和解しませんか」
『べつに怒ってなんかないわよ。あの警戒のしかたに間違いはないもの。得たいの知れない「なにか」に簡単に心を許すのが間違っている。』
「あなたはディセンダーであり、我々の仲間です。そうつんけんされると私も悲しいのですがねぇ。」
『あなたに仲間とかそういう風に云われるのちょっと違和感過ぎて鳥肌たつ。』
ぞわっとした。と付け足せば今度こそ彼はあきれてため息をついた。
彼は毎度すこしずつシルヴィアにたいしての態度が違う。今回はいいほう。3回目はやばかった。それこそディセンダーとしての道具としか思われてなかった気がする。
「あなたは随分と我々をよく知っているようですね」
『そうね』
「ヒトの本質、過去、性格、それこそ長い間一緒に過ごしていたかのようにその人間が一番にほしい言葉を与えているようにもみえます。なぜあなたは」
『……見守ってきたからよ。世界樹と一緒に「長い間」』
ぱっちり。視線がしっかりとあい、シルヴィアは口許をつり上げる。それにメガネの奥の瞳がほそまった。
『ジェイド・カーティス。貴方は長い間苦しんでることがある。だからこそ、ここにきて変わったこともある。私を仲間の一人に数えたのがなによりの証拠。いいんじゃない。それで。それ以上を求めるのであれば時間と信頼が必要よ。』
『私にはそれに必要な十分な時間はないだろうけど』と告げてまた笑った。
世界は解決に向かっている。それにこのあとはもっと物語は加速していく。みんなと仲良しこよしでいれるのはあとすこしの間だけ。それは、十分にわかってしまってるからこそ、笑うしかない。
「あなたは諦めてるんですか」
『諦めてるんじゃない。終わりを求めてるだけよ。ディセンダーの終わりを待ってるだけ』
諦めとは違うと言い切れる。
だって帰りたいと思っているから。
190402
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