時間が酷く遅く感じる。それは今がまだ平和だからだろう。
この間さんざんユーリに絡まれフレンにからかわれ、そのあとアスベルとソフィを紹介してもらった。フレン経由で私を知っていたらしく彼も彼でいい具合にからかってくれたが、今度一対一で剣で語り合おうかといったらドン引きされた。
ぱんっとタオルを振りきる。
ふんわりとした柔軟剤の匂いにほほが緩むが、少しずつ甲板に植物の入ったケースがならび始めたから今のうちに洗濯をしようという話になったのだ。
しっかりと集められるのは遺跡に化石を取りにいってからになるからだろうが、私はそれに組み込まれることはないだろう。この間、ただの採取だった任務で大ケガをおったからきっとアンジュが許してくれない。
「シルヴィア、今いいかしら」
風のなかに、声。
扉から少し離れていたら扉が開いた音は聞こえなかったが振り替えればそこには声の主であるジュディスがいる。『大丈夫だよ』と声を返せば「ありがとう」と返された。
「話がしたかったの。あなたと…。」
それは、なんの話か。
おおよそ話はわかっているのだけれど、手にもっていたタオルをさっさと竿に下げてから飛ばないように止めた。
彼女の様子を見ながらジュディスは手にもっていたそれを広げる
「故郷とディセンダーのために肉体を捨て、機械に宿った異世界の賢人達。これはニアタのかけらよ。あの時、もって帰ったの」
それはラザリスによって壊されたニアタのかけら。
彼女が持ち帰って来ているのはいつものことだ。その中の内容は塩結晶のことだったり、カノンノのことだったりする。
「これにあった情報…、読んでいたのよ。しうしたらニアタの故郷のディセンダーの姿が見えたの。そのディセンダーが,カノンノにそっくりで…名もカノンノというらしいの」
わかっていたことだったけれど、昔はすごく驚いた。けれど、実際、カノンノはなにかをするときにすぐにはあきらめない。ドクメントをコピーしたときも彼女は大丈夫と笑っていた。
『それは本当?』
「欠片からとても強く伝わってくる。「パスカ」という異世界のディセンダーカノンノ。ともにずっと,故郷の世界を守り抜いていた固い絆。ニアタは,ディセンダーを愛していたようよ。 孫のように、娘のようにね」
宝物を抱き締めるようにジュディスはその欠片を胸に引き寄せる。
「偶然なのかしら。私たちの世界のカノンノが、彼のディセンダーととても似た人、そして同じ名前だったのは…」
『…だけど』
「えぇ、「この世界は,故郷パスカの情報因子を受け継いでいない」って言っていたわ。でもそれだけじゃないのシルヴィア」
その目はいままで見てきたものとは違う目だ。
まっすぐシルヴィアを見つめて話さない目は疑惑というよりも確信めいたものを孕んでいる。
「ニアタの記録にはカノンノだけじゃない、過去4人のディセンダーが居たわ。それは全てシルヴィアという名のディセンダーで銀色の髪をもった、あなたのようなヒトだった。」
あぁ、ニアタはとんでもないものをジュディスにたくしたんだとそう思ってしまった。いままでそんなことは起こったことはない。それあの壁画の絵と共通しているものでもあるんだろう。
『世界には似たヒトがたくさんいるわ』
「えぇしっているわ。でも、ユーリ・ローウェルという男が愛したシルヴィアはきっとこの世には二人といない。」
『ジュディス。』
「私も、まだ半信半疑なの。けれど、このニアタの記録と、あの壁画の物語と、ユーリの様子を見ていると、頭のなかにあなたの幸せを願っている自分がいるの。それと同時に何故彼を置いていったのかっていう怒りも」
そういっているジュディスの目はどちらかといえば悲しみに染まっている。その理由は理解したくても理解できない。
それは、私の記憶がそこまでないからだ。
『ジュディス。あなたはあなたの信じるたいものを信じればいい。私への怒りがあるなら、いいよ。それで。』
「いいえ、怒りというわけではないの。ただ」
『なに?』
「あなたがそういうということは、あの壁画はやはりあなたのことなのね。」
鎌をかけられてしまったか。
苦笑いをこぼしてしまったが、否定も肯定もしなかった。きっと彼女もそれ以上は求めないだろう。
「それから、シルヴィア、あなた無理はしていない?」
『ディセンダーにそんな感情は必要ないよ。大丈夫』
それに、もう私を止められるヒトはいないのだから、
190306
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