しばらくの任務禁止とクエスト禁止にシルヴィアは苦笑いしかこぼせなかった。
いや、実際仕方がないのかも知れないがそれにしてもこれではまるで非戦闘員扱いである。いままでさんざん戦って体を動かしてきたからどうにももどかしくなってしまうのだが、これは自分の日頃の行いでどうにかするしかないのだろう。
そう思って、最近は定位置になった食堂で先日の謝罪も込めたお菓子作りに精を出していれば、聞きなれた音とともに開いた扉。
『ごめんなさい、まだ仕込み中で…あれ、フレン?』
「やぁシルヴィア、久しぶり。」
そこにいたのはまだガルバンゾにいるかと思っていた知り合いの姿だ。ひらりとシルヴィアに手を降る姿は下町の時とは違って軽装で、なかなか見ない姿だとかおもってしまったのは実際になかなか見ないからだろう。
『びっくりした、いつからこっちに?』
「実はシルヴィアが塩結晶を取りに行った日にね。そのあと君となかなか話す機会がなくて」
『あぁ、結構私のところヒトの出入りも激しかったしね。』
作りおきしてあるフルーツティーをグラスに注ぎ、先日作ったスコーンをトレーにのせてキッチンからテーブルの方へ。そうすれば「いつもありがとう」とフレンはそう笑って彼女の向かいに座る。その目の前にグラスをおいてシルヴィアも座った。
「前から少し不思議なこだとは思ってたけど、まさか君がディセンダーだなんて思わなかった。」
『騙していた訳じゃないの、ごめんね』
「いや、別に構わないよ。実際ディセンダーだろうが、そうでなかろうが君は君だからね」
本当にフレンはユーリににていると思ったのはもともとの根本がにているからなんだろう。シルヴィアが欲しい言葉をくれる辺り、彼とにてると感じるのだが。
「でも、君がいくつかヒントをくれていたお陰でこちらの混乱も少なかった、ありがとう」
『何も手伝ってなかったとおもうんだけど…』
「そうでもないよ」と笑ってグラスを傾ける姿をみて、はてと考えるが本当に心当たりはない。そんな私の様子に今度はフレンが笑う番だった。
「君がユーリと話していたカフェは騎士団の情報を交換するところでもあってね。そこで君がアドリビトムというギルドをユーリ紹介していたって聞いたんだ。道具屋のキルに聞けば実際アドリビトムにユーリが入ったことは聞けたし、だからアンジュさんに御願いすることもできたしね」
『私そんなこと思ってたわけじゃないわ』
「うん。それでもユーリを犯罪者にしなくてすんだからね。指名手配は形だけそうしてみたんだ」
まさかの言葉にくちもとがひくついた。本気で犯罪者になったかと思っていたから余計だ。
とりあえず落ち着こうとグラスに口をつけたのだが「ところで君とユーリはいつ式を挙げるんだい?」とさも当たり前に言われて吹いた。
顔面におもいっきり液体を被って甘いにおいがする。
『っげほっごほっちょっとフレン!』
「あ、ごめん。ユーリとはそんな話にはなってないのかな」
『そうじゃなくて!私はディセンダーであって』
「でも君は普通の幸せがほしいんだろう?」
ぴたりと動きが止まってしまう。
フレンの空に似ている青い瞳が私を子供を見るような目で見つめていた。心底優しい瞳。
「ユーリはシルヴィアのことを本当に幸せにしてくれるとおもうよ。その時には僕も呼んでね。」なんてさもあたりまえに言われていっそ顔が熱くなった。
たしかにそんな話しはした。あの下町で当たり前のような幸せが欲しいって。だからといってと突然言われればこうなってしまうのはやむを得ないだろう
「シルヴィア、お前任務禁止って…」
『っユーリ、それ食べちゃって、』
そしてタイミングが悪い。
聞こえてきた声と視界に見えた黒にすぐに身を翻してキッチンにひっこんだ。っていうか一回顔洗わないと本当に甘い匂いがすごい。
「フレンなにしたんだよ」
「僕はシルヴィアに結婚式には呼んでねっていっただけだよ」
「はぁ!?シルヴィアおまえ!」
『フレン!ばか!ややこしくしないで!!』
そう、こんな幸せが続けばいいってそうおもう。
190306
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