すでにセルシウスの泪をつかって、マグマのなかに一ヶ所固まった道ができていた。
確かにここまでは通常通りの環境だったから問題はなかったのだろうけれど、ここから先にはジルディアの世界に関かされた魔物が出る。そして、世界も少しずつ彼女の世界に染まっていっている。だから、ここまでしかこれなかったのだろう。
「ここの魔物は異質だ。いや,この空間自体が異質というべきか」
「あのキバに近づいていっているという確証だ。」
「ともかく早くいかないとな」
赤い世界にちらほらと白が目立つようになると、すでに何体かとは戦ってその強さがみにしみているからこその言葉だった。
『あの牙を通してラザリスの世界の情報…ドクメントが流れ込んでいるってアンジュが言っていたし、魔物に影響が出ているのも当たり前のことだろうけど』
「あぁ,だがなんともいえない。確証を得るためにも,先を急ぐぞ」
ただ、ここから先は普通のヒトにとっては毒の世界だ。だからこそ、ディセンダーが必要だった。
火山の奥地へと進んでいけばどんどんと世界は白に変わっていく。さすがにマグマまでは固まってはいないが、続いているところは白に侵食されて、本来の壁の色ではない。
しまいには、その白い壁に青い根が張って、いくつかのつぼみと花を見る。
もともとの色は、すでに失われた空間だった。
「この壁の色…あれが…ジルディアのキバなんだな」
その壁に触れて、ロイドが告げる。
彼はもともともの作りが好きな少年だから、この色が別の意味で興味を引かれるのだろう。
「なんか・・・夢に見そうな景色。だけど、うん,やっぱり綺麗だな,素直にそう思う」
「だが、ここには命はないな…」
ロイドがその風景を見,言った。次に告げたのはジューダスである。ここに来るまでに魔物は少しずつ少なくなっていった。それは、対応しきれていないから生きていけない。
だからこそ、少しでも対応していこうとその身を変化させていくが、それに間に合わなければ待つのは絶望だ。
「不思議なものだな、ここは人間が生きていく世界ではないことが分かる」
『でも、これがラザリスの…ジルディアの世界なの』
少し先には、マグマのなかにそびえる美しい牙が見える。
彼女がこの世界をてにするために伸ばす、根。
それをみて言葉を漏らすクラトスに、シルヴィアがその言葉を告げた。
自分がなんのために、めぐるのかはわからない。
わからないからこそ、いつも考える。
いつも自分はどこで選択肢を間違ってしまっていたんだろうと、そう、考えてしまうのだ。
きゅっと唇を噛み締めたシルヴィアを見ながらジェイドたちから預けられていたその「コピーズ・ロッド」をてにもってロイドは目的である牙のもとへ歩いていく。
そして牙に掲げれば先端に埋め込まれている水色の宝石が輝いて、鼓動を繰り返すドクメントが現れた。それは、ラザリスの世界の躍動で間違いはない。
光がやめばドクメントは吸い込まれるように宝石へと溶け込んでいった。
「これでいいのか?」
そう、あまりにもあっさりしたことだ。
だから確認するようにロイドが振り返ったのだが、「専門知識を問うものなら,お前にこの仕事が任されるはずないだろう」あきれたようにジューダスに言われてしまって、それにシルヴィアは小さく笑った。
「ちぇ,バカにしやがって…まっこれで仕事は完了なんだな」
ロッドを壊さないように背負い直して、ロイドは回りを見る。
ここに長居をするのはよくないと再三言われているからこそ早くここから立ち去ろうということではあるのだが、まだ、やることはある。
いつも、キバは消すことはできない。それはわかっているのだ。
身を翻したロイドの背を追いながら、クラトスに視線を向ければ「また怒られるぞ」と告げられる。
『そしたらクラトスも一緒に怒られてよ』
「あぁ、止められなかった私の責任だな。」
『よろしくね。』
いつまでも追いかけてこないシルヴィアとクラトスにジューダスが振り替えれば、彼女はすでに牙の方へと足を動かしはじめている。
「おい、シルヴィア、何を。」
声をかける前に、ふわりとシルヴィアの体から光が溢れた。まさかとおもう前に、世界が白に包まれる。
ーんでだよっ、おい、なんでっ!!!
シルヴィアの耳に届いたのは、大切なヒトの悲鳴だった。
190305
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