「シルヴィアさん、ごめんなさいね。」
『平気だよ。これは私の使命だから』
目を覚まして、落ち着いた頃にやっと今現在どこまで話が進んだかを、カノンノとイオンから聞いた。
二人とも大分心配してくれていたのだが、それよりもナタリアやルーク、ルーティやマルタと、まぁいろんなヒトがお見舞いに来てくれていたらしい。ずいぶんと心配をかけてしまったなと、みんなに謝ることとごめんなさいの気持ちを込めて再びお菓子を作ることにした。
とはいっても、この任務が終わってからの話なのだが、たしかこの任務は、私が力を使うところだった、はずだ。
ジルディアの牙の調査。でも、実際、ラザリスの力が強くなっていることは感じていたからなにかあるだろうとはおもったが、どうやら牙までたどり着くことができなかったらしい。「本当はもっと体を休めてほしかったのだけれど…」と、心底申し訳なさそうにアンジュがいっていたが、どっちにしろ、私はこの任務ははずせないものだと思っていたから問題はない。
「私が責任をもって無理をしないように監視している。安心してくれセレーナ」
「すみません、クラトスさん。よろしくお願いします。」
少々聞き捨てならなかったが、同行者にクラトスもいるのであればとくに難しいこともないだろう。自信をもって言えるのは、このヒトは私の師匠のようなヒトだから
「シルヴィアも、無理はしちゃいけないんだからね。」
『今回は後衛に徹底するから大丈夫。行ってきます。アンジュ』
と、まぁそんなこんなで、今回初めて訪れたオルタータ火山。
相変わらずの暑さにペース配分を考え始めてしまうのはやはり、少しでも迷惑をかけたくないからだ。
「あ!おーい!クラトス!シルヴィア!」
先に多少の魔物避けをしてくれていると聞いていた今回の同行者であるロイドが私たちの姿を見つけて手を降ってくれた、
その横にはもう一人の同行者のジューダスもいる。
彼らと合流すればロイドはいいえ笑顔で「よろしくな!シルヴィア」と私に手をさしのべてくれた。
『こちらこそ、よろしくねロイド、ジューダス』
その手に自分の手を重ねて笑う。
ジューダスにも声をかけたが彼はこちらには視線を向けてはくれない。それに苦笑いをこぼしてしまった。けれど実際、彼らは私たちの「厄介事」に巻き込まれてしまったヒトなのだから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが。
『ジューダス、私たちの危機に巻き込んでしまってごめんなさいね。』
「…それは、お前もだろう、」
『私?』
謝罪をのべれば、予想外の言葉が帰ってきて首をかしげてしまう。
私は彼らの厄介事になにか首を突っ込んでしまったのだろうか。いっさいがっさい記憶にないのだが、クラトスに視線を向けてはみたが、彼はそしらぬ顔だった。
「…バルバトスだ。あいつは僕たちの世界から一緒に飛んで来てしまった。女なのに、傷を負わせてしまったな、」
『あぁ、あの狂戦士か、』
言われて思い出す。
たしか、バルバトスは未来のスタンや、英雄と言われた人物を倒して回り、それを阻止しようとカイルたちが戦っていたところをこちらの世界にとばされてしまったんだったかと、思い出す。
今回は残念ながらその現場に立ち会えなかったからこそだ。
バルバトスも、私の事を覚えていたし、とくになにも気にする事はなかった。
『強い人間を求めてるんだったら、強いって思われてるってことで、私はそれなりに嬉しいわよ?』
「はは、シルヴィアは怖いもの知らずだな。」
『そういうものだもの』
「…それはディセンダーだからか。」
突然何をいうのかとジューダスをみてしまった。
ロイドも驚いたように一瞬固まって、そのあとに、私とジューダスを交互に見る。
本当はクラトスに視線を向けてしまいところだが、それは逃げになるのだろう。正直そうは思われたくない。
「ディセンダーの伝承にそうあるから、お前はそうしているのか。」
『はいか、いいえの二択しかないのであれば答えかねるわ』
「お前の言葉でいい。」
私の言葉。
そう考えてしまえば、ふっと息をついてしまう、
とりあえずと歩き出せば、みんなが足を止めていたから私だけが少しだけ前方に進んだ形になった。
そこから振り替えれば、みんなと目が合う。
『‘’太古より予言されていた守り手は世界樹より生まれ,世界を守護するため現れる。「ディセンダー」に過去の一切無く「不可能」も「恐れ」も「何」も無い。あるのは『自由』と『命』のみ。それは自由の灯し火である。己にたいする幻想を持たず、幼子のようにそのときを生きかの者は光を奪わず惜しみなくすべてのものに光を分け与える。‘’だったかな、ディセンダーの伝承って。』
「オレが、知ってるのはそうだな。」
口に出すとなんて不自由なものだろうと思う。
過去の履歴がないということは「道理を知らない」ということだ。国のこと、世界の事、これから何が起こるか、自分の役目がなんなのか、何をすればいいのか。それを理解していないことになる。
ロイドが確認してくれたから、改めてジューダスをみた。
『私は、世界樹を守るために顕現したのではなく、私の夢を叶えるために顕現した。その夢は、私の大切なヒト達の幸せを叶えること。そのためには、不可能なんて考えない。でも死にたくはないから恐怖はあるよ。だけど、心から助けてほしいと願ってくれれば、私はそのヒトの願いを叶えたいと思う。だから、半分あってて半分は外れ。』
「お前に、過去の記憶はあるのか。」
『過去がどの辺りかはわからないけど、私は「私」だから、世界樹が私のすべてを知るだけだよ。』
私に言えるのはそこまでだ、
それ以上は、企業秘密。だって、私だけが持っている感情だから誰にも渡す必要はない。
実際、もう何回もおんなじことを繰り返してると伝えたところで、誰にも理解されないのは目に見えてる。
『ともかく、いまは牙の調査にいきましょう?実はシンクとイオンに黙ってきちゃったの。心配させちゃうから、』
いまの私は、ただの私だ。
いまを精一杯生きて戦うだけの私。
そこに、恋愛感情も、誰かをいとおしいとおもう想いも抱いてはいけないことはわかっている。
何度だって、裏切られてしまうから。だからこそ、
『(あの指輪も、捨てたの。)』
もう、過去を振り返らないために。夢を抱かないために。
20190304
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