「本当にごめんなさい!!!」
『過ぎたことを謝られてもしかたないの、カイル。頭をあげて』
ベットの上に座るシルヴィアに床に土下座してカイルは必死だった。彼女が目覚めてすぐにそれを報告しにいったユーリの話を聞いてカイルは彼女のもとに走ったのだ。
あのとき自分に迫っていたあの斧に、自分は死ぬんだとそういう確信があった。もう一度、スタンに会いたいだとか、もっといろんなことをしておけばよかっただとか、いろんな事が走馬灯のようにとはいい例えで、そう、実際諦めたのだ。
けれど、待った痛みはいつまでも来ず、代わりにぬるりとした液体の感触。
自分に覆い被さるように、身を呈して守ってくれた、目の前のヒトは、代わりに大ケガをした。
それこそ、一歩遅ければ確実に命を落とす、そんな怪我を。
「でも、でも俺!!!」
『謝れても迷惑なんだよカイル。時間は巻き戻すことはできないし、そうやって頭を下げる時間がそもそももったいない。」
「だって」
『カイルはどうしたいの。私は別にカイルに謝ってほしいことなんてない。がんばったねって励ましてほしいの?しょうがないよって慰めてほしいの?それとも被害者面したいだけなの?』
目の前にいるのは子供だ。それはわかっている。
けれど子供だからとあまやかすことはない。甘やかしてはいけない。
「シルヴィア」とカイルの後ろにいるスタンがどうしたらいいかと視線をさ迷わせていたが、大丈夫だと視線だけを向けた。
そのまま再び、カイルに視線を向けるが、下に向いたままの視線はシルヴィアと交わることはない。
だから、ベットから降りて、カイルの横を通りすぎようとした。
「!!ダメだよシルヴィアさんまだ!!」
『私は、バルバトスに負けた。あいつがいつその復讐でここに来るかはわからない。だったら強くならなくちゃいけない。生きているんだったら』
「え?」
『カイル。私に頭を下げるぐらいだったら誰かにありがとうと言われるぐらい強くなりなさい。誰かの英雄になれるように努力しなさい。後悔は、強い力になる、私はいきてるんだから、助けてくれてありがとう。でいいのよ』
鳩が豆鉄砲を食らった。
まさにそんな言葉があうだろう。ぱしぱしと何度かまばたきするカイルの頭を勢いよくわしゃわしゃとかき回す。小さく悲鳴が聞こえたが気にしない方向だ。
『戦っているんだから怪我をするのは当たり前なの。私だって痛い。でもね、カイルが死んでしまうんだったら、死ぬ気で守った方がいいじゃない。』
「でも、それでシルヴィアさんが死んじゃったら!!」
『私は死なないわ。』
空気が固まる。
『私は、死ぬときに死んで、死んではいけないときには死ねない。そういう生物よ。』
にっこり。
笑顔でそう告げた。
190228
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