それは、まるで、刹那という、瞬間ににた。
この狂戦士と戦うとき、大体治癒術をつかえる「誰か」がいた。
しいなもそうだけれど、二回目はたしかミントだったし、三回目はエステルだった気がするし四回目の時には若干今と似たような形になってたから魔法剣士で私が受け持っていた気がする。
今回だってジュードが治癒術に近いものをつかえるから、大丈夫かと思っていたのだ。
そもそも、あまりアイテムを使う習慣がないから私的には。
だから、カイルが私の削がれていく気力を持ち直させようと、それを使ったとき、目の前の男の眼が、光ったのだ。
「アイテムなんぞ!!!」
目の前の男が、一瞬にして消えた。
---私の剣が空振りして、体制が崩れた。
カイルの目が大きく見開かれる。
私の背の奥で、誰かが動く音がする、
しいなが、札を投げようとしているのが、見える。
でも、どれも、まにあわ-----
アクマが私にささやいた。
うなずいたらいけなかった。けれど、目の前で振り上げられるそれが、一瞬カイルの血を巻き上げて赤を散らすのを、想像した私は、最悪だ。
崩れた体制から、一歩。
そして、一歩!一歩!!一歩!!!
『っカイル!!!!!!!』
一瞬だけ時間が止まった気がした。その一瞬が私にとっての一生のような気がした。
私を呼ぶ、声が聞こえた。
振り上げられたその隙間をぬって、少しだけ小さなカイルの体を抱き締めた。
瞬間。
「使ってんじゃぬぇぇぇえええええ!!!!!」
背中を、まっすぐに冷たい感覚が突き抜ける。上から、下に、まっすぐに。
ついで悲鳴。ぶつかったことなんてないけれど、マグマがたれながされているようなそういった言葉がにあうんじゃないかってほど、背中が熱い。
焼きごてを押し当てられているかのように、酷い痛み。
近距離で、絶叫。
けれどその声すら遠く。
あぁ、私、
「シルヴィア!!シルヴィア!!!!」
うでのなかにいるだれかが、私をよんでいる、
だんだんとかんかくがとおのいていく。
私はいったい、だれによばれているんだろう。だれに、ダレに?
私をまっていてくれたひとがたしかにいたはずなのに。
--かわいそうなシルヴィア
だれ?
--イキタイ?イキタイヨネェ?
だれかが、私にといかけた。
昔、聞いた声だった。
------私は、生きたい。
*Side Jude
カイルくんが悲鳴をあげた。
その腕には血まみれのシルヴィアを抱いて。
彼女の血のついた斧を片手に「俺の刃の前に出てくるとは、血迷った女だ」とバルバトスがいっている。
ぽたり、ぽたりと、地面が色を変えていく。
赤い血を流すのはヒトだけだ。
カイルが必死に呼び掛けるシルヴィアの背はぱっくりと割けて骨こそ見えないものの、明らかな重傷。
このまま放置すればシルヴィアは、ディセンダーだろうが、なんだろうが、
「鋭招来!!!魔神拳・双牙!!!」
僕が医者になりたいと思ったのは、何よりも助けたい人たちがいたから。
目の前で大切な仲間がその灯火を燃やすならば、僕だって戦っていきたいと思う。だから、僕は、ここにいる。ミラと共に、シルヴィアと共に来た。
バルバトスの意識がこちらに向いた。
しいなに目配せば彼女は気がついてくれて、すぐにシルヴィアのもとに駆け寄っていったl。
僕はシルヴィアほど強くないってわかってる。ずっとずっと弱い。
それでも、死ななきゃいい。
「邪魔を、するなぁ!!!」
「輪廻旋風!!鳳墜拳!!!」
シンクと同じだからこそ、何度も一緒に特訓した。
彼もシルヴィアを守りたいと思っている子だから。
引き寄せるように風を起こして空中に蹴りあげる。そのまま宙に浮いた体を炎をまとわせた拳で地面に殴り付けた。
うまいこと入ったのか、ぎりっと歯軋りをしたバルバトスだったけど、受け身をとらえれて僕の体がやつの蹴りによって吹き飛ぶ。
からだの前で腕をクロスさせて直撃はふせげたけど、重い。
「治癒功!」
「ちょこまかと!!」
「僕は!!誰かのために戦うんだ!殺劇!!舞荒拳!!!!」
瞬時に回復をして、奥義をぶつけたがバルバトスも僕と同じようにガードをしているのが見える。
「ぅわ!!」
「はは、甘いな小僧。」
瞬間、足が捕まれた、
そのまま足が掬われて、頭が逆さになる。
完全に無防備な。バルバトスが腕を引くのが見えた。
あぁ、くそ、僕は、痛みが来るだろうと、眼を、つぶった。
「ほぅ、お前、あの傷で立ち上がるか。」
けれどその痛みは一向に来ない。
眼を開ければそこにいたのは、シルヴィアだ。あの細い片腕でバルバトスの手を止めている。
瞬間、僕の体が重力に逆らって、宙に浮いた。
放り投げられたとわかるまで、秒。
けれど、その体をシルヴィアがふわりとすくいあげて、そのまま背に回される。
シルヴィアの装束は、たしかに赤に染まっているし、バルバトスの攻撃を受けた背中側の布は無惨にも引き裂かれている。
けれど、
「え…」
傷跡が、一切ない。
『ジュード。』
「っなに。」
『おねがい、みないで。』
髪の隙間から、わずかに見える白に、ゾッとする。
シルヴィアの顔はまっすぐ前を見たままだから、僕の方なんて見てはいないけれど。
『ここは、逃げる。カイルたちに、塩結晶を採取後、先に地上に上がるように伝えてある。ジュード、ごめん、私と時間稼ぎ、して。長く、もたない。』
「っはは、怒られちゃうよ」
『もう、怒られるの領域越えてる』
感情の抑揚がない。
けれど、たしかにしっかりにぎる、朱雀と青龍の刀はたしかなきらめきを持っていた。
『援護』
「了解!」
駆け出したシルヴィアは、今までの非じゃなかった。
おそらく、カイルたちに見られていないということもあるんだろう。それこそ純粋すぎる殺意を、バルバトスに向けていた。
いや、もしかしたら、どちらかというと…それは、自分の命を脅かした害を、徹底的に排除するような、そんな感じに近かったのかもしれない。
まっすぐにまっすぐに貫かれる剣は、確実にバルバトスを押していった。
楽しみは、また、と
息絶え絶えに、逃げたバルバトスを追う元気は僕たちにはなかったし、シルヴィアも『もう二度と会わないから』なんて平然と答えたから本当にもう会わないんだろう。
ふりかえった彼女の顔はまっしろで、それこそ、人形みたいで、瞳の色が血みたいで、
『ジュード』
「な、に?」
『ごめんね、こんなに気持ち悪いのが、ディセンダーで』
にこりと、自傷気にわらって、まるで糸が切れた見たいに、シルヴィアはその場に崩れ落ちた。
190224
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