空を眺めながらアウリオンとはいろいろな話をした。ディセンダーの話もそうだが、この世界の今の状況のことも…。私が今まで巡ってきた場所と同じ。だから未来のことを話さないように、そういうことだけを考えて話した。
ライマ国じゃなくてガルバンゾを選択しなかったのは正解だったのかもしれない。思ったよりもアウリオンは情報通だ。もうすぐクーデターが起こるだろうやらなにやら、教えてくれた。もし選んでいたら止められたかもしれない。とはいっても選んでいたら何が何でも行っていただろう。
私が再びここに出会うのは、いつぐらいなのだろうか…。でも、ここで長く生活することはきっとない。世界の危機に降臨して世界の危機が去れば世界樹に還る存在。それがディセンダー。
あの子が…ラザリスが動きだすまで…私は今まで出来なかったことをするだけだ。それに…私には大切な武器がある。だから問題はない。
そう思ってたら風の流れがふわりと変わった。
続けて機械音。アウリオンが後ろを見て、つられて振り返ればそこにはカノンノと、そしてまだ今回一度もあっていない青い彼。その手には小さなお弁当箱のようなものが握られていた。
「では、またなシルヴィア。」
『えぇ、またいつか…アウリオン。』
彼女らを見てアウリオンは私に一度そういうと身をひるがえした。さりげなく「またな」と言った彼は、きっと何かを感じているのだろう。
彼も、また私と同じような人だった。だから、かもしれない。もしかしたらなんてそんな可能性すら思ってしまうのは、彼が話してくれる雰囲気が今までと変わらなかったから…まだ分からないけれど。
「あなたはクラトスさんと知り合いなの?」
彼の背を見送ってそんなことを考えていれば、その考えを吹き飛ばす、彼女のそんな質問に、思考と視線を向けた。当たり前か、彼女にとっては旅をしているといった私が彼と知り合いなのは疑問に思うだろう。
でもアウリオンは傭兵だから、どこで会おうが変わりはないと思うが。
『昔に、助けてもらったことがあるの。』
疑問に思われないその言葉。これだけは本当。1度目の時も2度目の時も私が間違った道を選んだときも、ずっとアウリオンはそばにいてくれた。嘘は言わない。
そうすれば、「そうなんだ!」っと彼女はなんの疑いもせずに笑って、横にいる彼を見る。
パタパタと羽を羽ばたかせて彼は私の目の前まで来ると、「初めまして!」と彼女同様笑った。
「僕はロックスといいます。これからガルバンゾ国へ行くそうで…もしよければこれを食べてください」
それから、差し出されるお弁当箱あぁ、彼は相変わらずだなぁとか思ってしまう私もそうとうだ。
『気を使わなくていいのに…でもありがとうございます。』
別にもらって損はない。彼の料理は普通に美味しいし大好きだった。受け取ってお礼を言えば、彼は「いえいえ、これも僕の仕事ですから」とそう言って一つ頭を下げる。礼儀正しくて丁寧で相変わらず変わりはない。
「あっあのね!もうすぐガルバンゾ近くにつくの。それを言いに来たんだ!」
『そう、わざわざあなたもありがとう。』
「ううん!いいのっ」
いつか、その笑顔が曇るのに、そのことを私は知っているのに、でも、私は何もできない。
彼女の中にある何かを知っているのに…
『ねぇ、グラスバレー。貴方は貴方の信じるものを信じていいのよ。』
なのに、こういう私はきっとずるいんだろう。
不思議そうに私を見た彼女に『気にしないで』と一言だけ言って、また、風を受けた。
*202100804
←
→
list
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -