風が髪を散らす。ここではじめてジルディアがルミナシアに顔を出す。
私はそれを知っている。
けれど、それを止めることもない。
すべては世界の思うがままに進んでしまうのだから、私が手を出した程度で終わりはしないのだ。
『こんな道、あったっけ』
「シルヴィア、どうかしたの?」
いつも通りにすすんでいって、そして最後の壁画のまえ、ディセンダーの伝承のまえでそれを見つけてしまった。今までそんな道をみたことなかったからこそ、首をかしげれば私の横にジュディスがならんで、意識を集中させる。
「この先に、なにか強い意思を感じるわ。これは…」
『強い意思?』
「えぇ、でも敵じゃないみたい。でも見方とも言えないわね。」
ちらりと後方にいるミラに視線を向ければ首を横に振るわれる。彼女にもわからないとなると、どうなるんだろうか。でも、今までにない道なら進むしかない。
「俺たちに寄り道する時間はないんだぞ。」
「あら、でもこの先に重要なことが隠されているのかもしれないのよ?」
キールに後ろからそういわれる。そう、寄り道する時間はない。ジュディスがそういってくれなければ私はこの道を進まなかっただろう。
彼女を再度見上げれば、ひとつ頷かれて、いく決心ができた。
まっすぐ前を向いて、地下に潜る様に延びる階段に足を進めていく。
『なに、これ』
広々としたその場所に、今までよりもずっと大きな壁画。
そして、それを守るように立ちふさがっていたのは、双剣を司るレディアントのツインソウルだった。
今まで、こんなことはなかった。
彼らが持っている剣は、間違いなく私が使っているものと同じ。
「あら、あの子達の持ってるのシルヴィアのものと同じじゃない。」
「どういうことだ?」
それに気がつかないジュディスじゃない。言われて、ため息をつく。私が持っているものはレディアントだが、装具がレディアントじゃなかっただけましだろう。
じっと彼らを見つめていれば、その役目を果たすように、ふわりと光をまとう、
光…光マトイシモノ…
世界樹ノ マナ ノ 輝キ…
世界樹 ノ 夢 タル ソノ 御姿…
ワレラ ハ ソノ 光 ヲ 待チイタリ…
アナタ ノ 影ニ ナル 為ニ…
ワレラ ハ ソノ光ヲ待チイタリ
聞こえてくるその言葉に、刀を抜いて前へでた。
「シルヴィア、加勢はいるか。」
『気持ちだけもらう』
くるくると手元で剣を回して、構える。
なんどもなんども戦った。彼らは力をあげているだろう。それでも私は負けない。負けられない。
強い光の中に私は生まれた。
そして、生まれて、生きて、泣いて、笑って、死んだ。
それが私のすべてだった。
たち伏せた二対に息をはいたのに、瞬間光に包まれてキールが私の名を呼んだのがわかったが、正直危ないことという危機感はなかったから、素直に目を閉じる。
--スマヌ ディセンダー
聞こえてきたのは、いくつかの声が合わさった声だった。
きっとそれは世界樹の声なのだろう。こういうときまでディセンダーというのかと、目を開けば、なにも変わっていないように思えたのだが後ろで息を飲んだのがわかった。
「レディアント、というわけか。」
『…うわ…いつのまに…』
ミラがほほえましくいうが、私にとってはそれどころじゃない。双剣士のレディアントは露出度が高い。動きずらさはないが、頭部に花が彩られていた気がする。私の服はどうした、弾けとんだか。タートルネックだけはそのままでほっとしたが。
「さて、それじゃああの壁画の内容を詠むわね。」
かつんかつんと、密閉された空間にジュディスのヒールの音が響く。
壁画は起承転結で言えば、ある意味すべてなのか、嫌な予感しかしない。
「…これは、」
壁画に手を添えていたジュディスがおどろいて私を見た。
何が書いてあるのか、私にはわからない。けれど、複雑そうな顔をして、視線をおとした彼女に「何が書いてあるんだ?」とキールが言った
「…ディセンダーの、生涯よ。」
『生涯?』
「えぇ、伝承に伝えられている裏側、というものかしら。きっと、これを描いたヒトはディセンダーはヒトになりたかったと思っていたのね。すごく、悲しい気持ちが伝わってくるわ。」
一体ジュディスはなにを見た。改めて自分で壁画を見る。
5つに分けられた壁画の色。一枚目は橙。ディセンダーと思わしきその姿はみなと手を取って世界樹を囲っている。
二枚目は、青。一枚目とは裏腹に孤独にさいなまれているような、胎児のように丸まった人影がないて、海を作っている。三枚目は、絵は書いてあるが色がなかった。四枚目は、そこに描かれている人物が己に剣…あの形状だと剣士のものだろうか。それを突き刺している。
これは、
『っはは、生涯、生涯ね。』
五枚目。
そこは空白だった。
これは、私のたどった軌跡だ。そんなものを、こんなところに記して何になる。
それとも、これは次の時、私が使えなくなったときの新しいディセンダー用か。世界樹を裏切ったディセンダーがいたと、言わせるためか。
「シルヴィア?」
『なんでもない。早く創世を見届けしものの間へいきましょ。』
くるりと、身を翻した。
これ以上、これを見ていたくない。
「シルヴィア…」
「ジュディス、今よんだものは他言無用で頼む。」
「…わかったわ。やっぱりそうなのね、これは。」
--あのこの物語なのね。
静かに、ジュディスが言った言葉に、ミラは肯定も否定もしなかった。
彼女があれを自分の物語ととるかはべつだから。
「ここは、ディセンダーに武器を授けるための間、ということか」
「そういうことにしておきましょ、さ、私たちもいかなくちゃ」
「あぁ、そうだな。」
190216
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