自分にとって、この任務はある意味区切りの任務といってよかったんだろう。アンジュと話したあと一度ガルバンゾにおりてキルと話した。
少しきついが一時的なものであれば問題はないよ、とキルが笑ってくれたことにほっとしたのはしょうがない。
彼が難しいと言えば他の案を叩き出さなくてはいけなかった。
「もしあれだったら、こっちの親分をそっちで作ってる、えっと」
「オルタビレッジだな」
「そう、オルタビレッジに一回出張にいってもらうのはどうだろう?そうすれば建築を学べると思うし。ヘーゼル村の人たちも全員じゃなくてまだ動ける人たちはそっちで学んでもらってもいいかもね」
『そしたら女性たちには作物のことを手伝ってもらったりかな』
「そうだね。ここは実りがかなりいいぶん驚かれてしまうかもしれないね。」
なんて会話をしたのがつい一昨日である。
アンジュとの打ち合わせどうりオルタビレッジに力自慢は先におりてもらって建築の手伝いを、女性人は光の里に行き食料調達。
そして残りはカダイフ砂漠で魔物の討伐となった。
ただし従来と違って、ヘーゼル村のメンバーに加えてナタリアとティアが加わっている。
こちらは変わらずユーリとすずとシルヴィア、そしてシンクの4人だ。
「確かにこの環境じゃぁ,女も男も関係なしに厳しい砂漠越えになるだろうな。」
「ここまでの事態を引き起こしたのは帝国です」
「まぁ、仕方ないんじゃないの結局欲深い人間に誰もかなわないのさ。」
どうしてか、今回もビジョップを選んでいた。ただ違うのはシンクとすずが前衛でユーリがシルヴィアの横で布陣を張っているということか。
砂漠越えどころか、自分達も色々なことに気を付けなくてはとそれは重々承知である。
「オレが,ガルバンゾのギルドに居たときや騎士団にいた頃は俺の知る世界は、住んでた場所だけだったな。帝国のことは知ってたがよその国や、世界の動きなんざ、まるで見えていなかった」
ユーリの言うことはもっとも。
もともと世界の進みを知っているから離れてはいたが、自分が過ごしていたあの場所はひどく閉鎖的で、だからこそアドリビトムのような翼がほしいとも思った。
「私も瀬戸を出て,さまざまなことを知りました。貧富の格差,星晶の大量消費,紛争…。大国が小国にしいた,単一栽培が引き起こす自然破壊,そして飢餓」
「このまま進んでいけば,世界の危機って奴はすぐに訪れる。ラザリスがいようといまいと関係ねぇ。国のお偉いさんは,なにも気がつかねぇまま終わらせようとする。」
あれ?とシルヴィアはユーリを見た。こんなこと言っていていなかった気がする。数度瞬いてしまったが逆に凝視しすぎたユーリに「本当のことだろ?」と苦笑いされてしまった。
「なんでも無理しない程度にな。国のお偉いさんにゃ頼れねぇとなると,俺達でなんなくちゃなんねぇし」
「えぇ、でも,シルヴィアさんは一人で抱え込まないでください。私たちがいますから」
「いやんなったらまたボクたちの場所に帰ればいいし。」
一瞬火花が散った。気がしたのは気のせいということにしておく。ともかく早く進んでいくことに越したことはないすずがあるきだし、シンクも続いていく。その姿を見てシルヴィアも足を動かした。
…が、手をとられて動きが止まる。
「シルヴィア。これは俺が選んだ道だ。一つの選択は小さいかも知れねえが、おまえが一人で背負い込むことはない。」
「少しは頼ってくれていいんだぜ」と、寂しそうに笑ったユーリに心が切なくなる。
『うん、ありがとうユーリ』
「あの返事も、お前の気持ちが落ち着いてからでいいからな。焦ってだした選択は認めない」
『うん。』
わしゃっと頭が撫でられる。そのままユーリはあるきだして、シルヴィアもそのあとを追った。
****
やはりいつもよりも魔物が強い。
息が切れて思ったよりも水分を消費してしまっていくのが痛いが、そこでまさかユーリがサボテンにソーサラーリングのパワーをぶつけて水を確保し始めるとは思わなかった。
実際助かったのだが、油断していたところに勢いよく水を食らってユーリに大爆笑されてしまったのが解せない。
「ねぇ、行き止まりだけど?」
かしゃんっと寂れた音。
行く手を阻むその道の鉄の扉に手をかけてシンクは言った。ここの場所まで来たと言うことはもうすぐ例の魔物が現れるかと、鞄の中のグミを確認したのは油断をしないようにだ。
「鍵は向こうからかけてあるらしいな」
「ふぅん、でもこの位なら行けるかな。」
扉の先をのぞきこんでユーリは言う。この先にいくにはこの扉を開ける必要があるのだが、それにすずが言葉を発する前に、シンクが告げそのまま扉から離れてたんったんっと軽く地面を跳び跳ねた、
そのまま駆け出していく。
軽々と飛び上がりつきだした岩を蹴りあげて壁を飛んでいった。
「ずいぶん身軽だな。」
『シンクはかなり脚力のある子だから。』
「じゃあ、あのイオンってガキもか?」
『あの子は戦うよりも守る方が強いからあそこまでは動けないよ』
空に消えていった緑色をみて、ユーリが眩しそうに目を細めた。太陽のひさしが、問答無用で照りつける。けれど、それを思ったのはユーリだけではなかったらしい。
「あの方は、どれだけの鍛練を積んでいたんですか?」
『シンクはただ純粋に自分がやりたいことをやっているだけかな、』
さっさか壁を越えていってしまったシンクに、驚いたのはすずもだった。
忍ほどの鍛練を積んでいるわけでもないのに彼はあっさり自分達がやるようなことをやってしまったのだから仕方ないのかもしれない。
少しして開いた扉と「ほら、さっさといくよ」と腰に手を当てて仁王立ちしていたシンクにユーリが笑って小突いていた。
『すずには、シンクがどうみえる?』
「すごいと、純粋に思います。ユーリさんもですが、あの人もきっと忍に向いています」
『そうだね、シンクは任務遂行のためだったたきっと真っ直ぐだろうね。』
ただ、シンクはヒトを恨んでいるんだろうなと、うっすらシルヴィアは思っていた。
もちろん、それに自分も加わっているだろう。
『生かされたいと思うものと終わりたいと思ったもの、助けて、恨まれるかもしれない可能性なんて私はしらなかった』
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