アンジュは悩んでいた。
シルヴィアたちを迎えいれ、戦力的にも安定はしてきているのだが、残念なことに、もう一個の自分の目標が進んでいない。
オルタ・ビレッジ。
きっと、シルヴィアがいた光の里を見てしまったから、余計にそう思ってしまうんだろう。もっと、彼らにすみやすい環境を提供したいというのが本音なのだ。なかなかうまくいかず、進行もしていないときに、ヴェイグたちからSOSがあった。
ヴェイグたちの出身地であるヘーゼル村はウリズン帝国というガルバンゾ国に敵対している国の言わば植民地である。
星晶をとりつくし、土地は痩せこけ、相当すめる環境ではなくなってしまったのに、働き手である男たちは他の土地へと派遣され、そこで過酷な労働を強いられてると知ってしまった。
どうにか助けたい。けれど今はオルタ・ビレッジの定員もかつかつで、なかなか思うように進まない。
どうしたらいい、どうしたら、どうしたら、と
『アンジュ、頭使う時には甘いものがいいよ』
「え、あ、シルヴィア?ごめんなさい。私、ぼーっと」
『大丈夫、今声かけたばかりだから。難しいこと考えてるんだろなって思って』
目の前におかれたのは暖かいミルクとバナナマフィンだった。彼女の料理の腕は知っている。それこそ初日にシルヴィアの作ったアップルパイをしっかりと間食しているのだ。
しかし、気になるのはカロリー。美味しそうなものこそアンジュの犬猿しているカロリーの高めなものだと知っている。
『疲れた時には甘いものって思って、バターは使ってないしバナナは他の果物に比べてカロリーも低い。それに食物繊維も豊富で、昨日ご飯我慢してるの見ちゃってもしかしてって思って』
「え、シルヴィア、見てたの?」
『見てたって言うか目にはいったの。ダイエットもいいけど断食は体に悪いし、ごめんね。太りやすくなるよ』
「っ!!!」
まるで、心が見透かされたようだった。にっこりと笑うシルヴィアに悪気がないことは知っている。でも、食べてしまったら自分に甘えてしまって横に成長することは目に見えてしまっているのだ。
「でも、」
『食べないならユーリに』
「っもらうわ!」
『ふふ、どうぞ。リーダー』
遠ざけられたお皿にすがり付いてしまったのはらしくないと承知してる。けれど、体が勝手に動いてしまったのだ。差し出されたフォークを受け取って、一口。
「っおいしい!」
『ふふ、よかった。食べ過ぎはよくないけどこれくらいだったら大丈夫だよ』
『ところで何をそんなに悩んでいたの?』
「えっと、恥ずかしい話をしてもいいかしら。」
自分用にココアを持ってきて、シルヴィアはアンジュに聞いた。
ぱちぱちと数度まばたきをして、一拍おいて、アンジュは告げる。
オルタ・ヴィレッジのこと、ヘーゼル村のこと、なかなかうまく進まないこと。
なにから手をつけていいかも分からなくなってしまって、どうしたらいいかもわからないと。
それはリーダーだからこその悩みだった。
『じゃあ光の里に一度1住人を一時保護するのはどう?』
「え?」
にっこりとシルヴィアは笑った。
バンエルディア号は目立ちすぎるためいつも下ろしている場所待機。
砂漠の逃げ道であるそこまでの魔物を先行部隊で一掃してこぼれは住人を守る部隊で倒していって砂漠越えをしてもらう。
それから船で保護してガルバンゾの森の前まで移動してそこで引き渡し。
『住居の問題は確かにあるかもしれないけど、一事保護だったら確かキルが新しく仕入れた大型テントがあったからそこで生活してもらえると思うの。光の里にいる間の安全と食料とかは保証できると思うし、』
「で、でもヘーゼル村の人たちは30人近くいて」
『船で一度に運ぶのが苦しかったら数日女性人はガルバンゾでイオンとジュードと食料調達。男性陣は各地のオルタビレッジで力仕事をしてもらう。』
『私たちにできたことがみんなにできない訳がないわ。』とそれがまさに止めだった。
確かに、半分諦めてしまっていた。目の前の少女はなにも諦めていなかったというのに。
「うん、うん!そうね、そうよね!早速ヴェイグ君たちと相談してみるわ!」
『私にできることがあったらなんでも相談してね。』
「えぇ!ありがとう!」
ばたばたとアンジュが駆け出していくのを見ながらふぅっと息をついた。こういう采配は苦手だ。
「いやぁ、すごいですねぇ。」
『カーティス大佐はお気楽で羨ましい』
「おや、私がなにかお気楽そうに見えますか?残念です、これでも色々なことに頭を抱え心を痛めているというのに」
『心にもないこと言わないことをオススメします』
気がついてはいた。けれどここまでしっかりがっつり彼が聞いているとは思わなかったのだが、別に構わない。
体を起こして食器の片付けを始めれば「私の悩みは聞いてくれないんですね」と心底残念そうに彼は言った。
『貴方の目は私を疑っていますから』
「おやおや、ずいぶん警戒心の強い」
『とりあえず、今のあなたにはなにも話すことはありません。一昨日来やがってください』
ーー190202
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