冷蔵庫に常備された大量のアップルパイに一番に食いついたのはリッドであり、次にリオン、女性陣とどんどんひろまりあっという間になくなってユーリが拗ねたのはつい翌日の話だった。その流れからシルヴィアが食堂にいるようになったのはクレアやロックスの手伝いをしたいと彼女が言い出したことから始まる。
「あれ、お前が作ったんだってな!なぁ!またつくってくれよ!」
「ルーク、ヒトにモノを頼むたいどじゃないだろ」
『そうね、時間があったらまた別の果物で作ってみるね。』
「へへっありがとうな!」
もう何度めかで巡っていることだから皆のなまえは覚えている。いつのときもルークとガイとは仲が良くなってこうやってはなせるのはありがたい。
「なぁ、もしよかったら一緒に魔物の討伐にいってくれないか?クレスの足は引っ張りたくなくて、な」
『うん、そしたら剣の準備をしてくるから少しだけ待っててチェスター。』
「わりぃな。先に外に出てるな。」
剣を使うからこそ、幼馴染みのために守りたいもののために強くなろうとする彼との戦いは自分を見直すためにすごく役に立った。それは今も昔も。だから、チェスターとまっすぐ向き合い背を任せるのはあの人と同じくらい安心するんだとわかったのは3回目のとき。
「ねぇ、シルヴィア。わたくしに料理を教えてくれませんか?」
「あっ私もおしえてほしい!」
「メルディもおしえてほしぃよぅ!」
「あ、あの私も一緒にいいかしら」
そんな日常を過ごしていれば男性陣にお菓子を作りたいとナタリアとカノンノ、メルディ、ティアに声をかけられた。先日のことがあるからナタリアはないかなと思っていたが彼女はそんな柔な精神は持ち合わせていなかったらしい。
思い出せばナタリアは調理場にたたせてはいけなかった気がしたが。
『そしたらスコーンでもつくろうか、ドライフルーツとチョコチップ入れて初心者でも簡単に作れるし、日持ちもするから』
「わたくし、できればあの日のんだフルーツティーの作り方もおしえていただきたいですわ。」
「アッシュに飲ませて差し上げたいの。」と少し照れたようにするナタリアに乙女だなとほほえましくなる。羨ましい限りだ。私はもうそんな感情抱いてはいけないから。
『うん、大丈夫だよ。材料はあるだろうから今からいこうか。』
*Side Yuri
やっぱりあいつはディセンダーなんだなと思った。いや、まじで。
「いいのか?」
「別にお菓子ぐらい私は作れます」
シルヴィアを含む5名がアドリビトムに参入した。精霊のミラ。彼女と契約を交わしているジュード。赤い煙から作り出されたイオンとシンク。
なんとも個性的な面々だが、それぞれがそれぞれの場所で意気投合している。
特にシルヴィアは、初日に作っていたアップルパイでものの見事に全員の胃袋を掴んだらしい。ヒトを惹き付ける魅力を昔よりも倍増させてきた。おかげであいつを狙うんじゃないかと思うやつらがちらほら見える。そんなの許さねぇが。
んで、なぜ俺が今エステルにこういったかと言えば、こいつは今現在俺にベッタリでシルヴィアを完全に敵視してるからだ。
菓子を作るときいてつまみ食いでもしに行くかと思った矢先これだった。なによりこの間自分も料理をしたいと言っていたような気がしたから言っただけだったのだが。
「(さっさとフレンを呼ぶか……)」
そうすりゃ少しはこのお姫様も少しは落ち着くだろう。どうしてここまで自分に執着するようになってしまったのか本当に疑問だが、シルヴィアとのせっかく少しでも近づけるイベントを何度も易々と逃したくはない。というのが半分本心である。
すでに自分が知ってるなかでもう中盤も終わりを迎えるんじゃないかと思うと余計に彼女との時間がほしいのだ。
190201
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