世界に絶望するのは何回目…?
ふわりと開いた視界と映りこんだ桃色にもう一度眠ってしまいたいと思った。
そう思ったって、私は絶対に悪くない。
もう、終わらせてくれと願って始まりの場所で終わりを迎えたのに…またこうして巡ってしまう。
またこの「始まり」かた。
また私は繰り返すのだろう。もう、どれくらいになるのだろうか。
ため息をついてしまえば、上から「大丈夫?」という声が聞こえて、今度はしっかり目を開き、体を起こす。
『うん、平気だよ。』
声をかけてきた桃色に、にこりと笑って見せた。そうすれば彼女はにこりと曇りのない表情で「アナタ、空から降りてきたの!すっごく驚いたんだ!」と、言葉を続ける。
もう何度目かの問いかけだった。何度も何度もされた「疑問」だった。
「あれは何かの魔術なの?」
言葉を返さず少し思いにふけってしまえば、彼女を心配させてしまったらしい、いけないなぁ、なんて…ふるふると、首を振ってみせれば、きょとんっと彼女は不思議そうに私を見る。
『違うよ、ただの実験なの。気にしないで?』
「実験?」っと意味のわからないような顔をされて『私、研究者なの』とまた一つ嘘。
一つついたならもう「私」を作り上げてしまえばいい。
もう私は限界だ。
無垢なままでも、純粋なままでもいられない。
一度すべてを捨てかけた。 だったらもう、一番最初から違う道を歩んでみたい。
どうせ、また違う道で会うことだから大丈夫だろう。
でもできれば、ちゃんと世界の危機が去った後…平和な世界でもう一度彼女に会いたかった。
たった一言。…たった一言だ。 望んだ言葉すら私はいつも返してはいないし、返してもらえない。
「私はカノンノ。カノンノ・グラスバレー。あなたは?」
もう始まってしまったから遅いんだろう。また私は繰り返す。ならば今は関係がない。彼女にはまた会うことになるのだ。
『私はシルヴィア。今は……旅をしているの。』
私は、この子に裏切られたわけではないけれど…でも…何度巡っても、彼女は私を覚えていてはくれない。
「シルヴィア…いい名前だね!とりあえずここは危険だから早く山を降りましょう?」
ふわりと風が吹く。私と彼女の髪を揺らして、ついでと言わんばかりにその風に背中が押された気がした。あぁ、また始めろって言ってるんだろうか…。でももう、思い通りになってやる気はない。世界は結局繰り返す。何度だって。
『そうだね。ねぇ、ここはガルバンゾから遠いかな。』
だから、一番影響がないであろう「そこ」に行こう。
できれば、二度と会いたくない人がいるけれど…彼らは比較的すぐに物語に加わったはずだ。そうすれば比較的長い間、関わらずに済む…はずだ。…一番私がその言葉を待っていた一言を持つ人を。だったらそれでいい…。あの人と、しばらくかかわらないならそれで…。
さすがに…「彼ら」は見逃すことはできないけれど…でも、私なりに阻止することはできるはずだ。…私は、私のやり方で…。
「ガルバンゾ?どうして?」
『次の目的地がガルバンゾの予定なの。』
だったらなんでこんなところにいるのか、とは言われそうだけど…でも、それでもいい。
あの時は本当に酷かったから…まだ今回はましなほうなんだろう。
「うぅん、どうなんだろ…?あ、でももしよかったら送っていくよ!」
『送っていく?』
「うん!私たちの船で!」
そう言えば、今後の移動手段考えてなかった…どうにかなるだろうけど、アドリビトムにいれば移動には困らないだろうなあ…。うん、楽なのは正直ありがたいことだ。
でも、…今回ぐらいは自由に生きさせて欲しい。
きっと…私にとって最後だと思うから…。
Re20210804
→
list
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -