あぁ、やっぱりそうだよね。とそう思うのはしかたない。まっすぐに向けられた槍にため息をこぼしてしまうのはほぼ反射だろう。
けれど私よりも先に動いたのは緑色
「アンタ、助けてやったのにその態度、なに?」
私の前に回り込み、それこそ自ら槍使いの間合いに入っていったシンク。
回りを確認しようと目だけを動かせば数日ぶりに見たクラトスの姿と驚いているアンジュ。そして私の名を呼んだカノンノ。
と、だいぶカオスな状態ではある。
『シンク。怪我はしてない。やることをはき違えないで。』
「でも、」
「ジェイド、お前もだ。少なからず我々を助けてくれたことに変わらないだろう。」
私とクラトスが制止をかける。そうすれば静かに頷いたシンクに対し、やはりジェイドはいまだに警戒心を持ったままだ。
彼は新参ものにひどく厳しいなと思うのは仕方がないそれが上にたつものの宿命ともいうものだから。
『私はシルヴィア。世界を旅しているの。この子はシンク。後ろの彼女はミラ。二人とも私を助けてくれる人たちよ。危害も邪魔もするつもりはない。だから武器をおさめてくれるとありがたいのだけれど。』
「信じろと?」
『そうね。』
にこりと笑って見せるが紅い瞳は許してはくれなさそうだ。
シンクの肩をそっと押して槍の前から反らす。「シルヴィア?」と不安そうな声を聞きながら、まっすぐに槍の前に歩き出す。
そのままぴたりと
『信用できないのならそのまま力を込めれば殺せるでしょ?』
槍の切っ先を心臓の前にさらす。紅の瞳がわずかに揺らめく、同時に私の腕をつかんだシンクの手はふるえていた。
大丈夫だという自信はある。ただまっすぐとジェイドだけを見つめてそらしはしない。
「だ、だめ!!!」
けれど空気に耐えられなかったのはカノンノだったらしい。突然私の体が後ろに引かれたかと思ったら私とシンクの前に桃色。
両手をまっすぐに広げてじっとジェイドをみてる。
「彼女は、シルヴィアさんは私の知り合いです!!!ジェイドさんっ信じてください!!」
静かな空間に響いた切実な声に、折れるのはジェイドだった。盛大にため息をついてから持っていた槍が消えた。
「全く、そこまで警戒はしていませんよ。 助けていただいてありがとうございました。」
その紅い瞳に警戒は未だにはらんでいるが優しさもある。だからこそ、左手をさしだせば一度その手を見て重ねられた。
『改めましてシルヴィアです。昔は傭兵をしていました。』
「ジェイドと言います。あなたがたはなぜこんな場所へ?」
『私も赤い煙の存在をおっていましたから、偶然です。もしよければこのままご一緒しますか?もちろん。邪魔立てはいたしませんし、戦闘ならまかせていただければ』
#Side jede
まっすぐな空色の目をもつ突然現れた銀色の彼女はあっさりとその場に溶け込んでいた。
「お久しぶりです、アンジュさん。」
「本当に!元気そうでよかったわ!」
アンジュと話している姿はただの女性だ。けれど、誰も気がついていないのか。いやおそらくはと、ちらりと一歩下がったところにいるクラトスへと視線を向ける。彼は、カノンノが魔物に襲われたとき動きもしなかった。まるですべてをわかっていたように。
誰か気がついただろうか。
あの三人のなかで一番最初に飛び込んできたのは銀色だった。ついで、カノンノを抱き上げ、瞬発で後ろに下がった直後に緑色が地面へと力を叩きつけていた。
それと同時に足で彼女を傷つけたゴーレムを蹴りつけ彼の攻撃範囲へと押し込む。その瞬間に、詠唱を開始していた。
あれは、並大抵の傭兵の動きではない。
「ジェイド、あいつのことを考えても無駄だぞ」
「おやぁ、顔に出てましたか?」
考え込むのは仕方ないだろう。声をかけてきたクラトスに笑顔を向ければ「目付きが変わったからな」とさらりと告げられる。
「あいつは昔からの知人だがどこの国にも属さない、孤独で優しい旅人。とだけ教えてやろう」
「国には属していないと?」
「あぁ。」
なるほど、それならばあれほどの力の持ち主が名をあげていないのも理解がいく。それこそ傭兵ならばもったいない。
それよりも気になるのが緑の少年の方だ。
たしか、シンクと言っただろうか。
彼女の背にすぐに動けるように控えている彼はなぜ、
『ジェイドさん。考えるよりも先に前へ進みませんか?』
にこりと笑って私へと振り替えるシルヴィアの瞳が笑っていない。
なるほど彼女は意識をいろいろ飛んでいるらしい。後ろに潜んでいてもダメだということか。
けれど、一体彼女は、
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