クロームを一人にはしておけないとデュークはその場に残ると言った。
ミラと、シンクとシルヴィア。3人でアルナマック遺跡へ足を踏み入れる。
相変わらず、この場所は薄暗くヒトの営みなどとうてい出来るのだろうかとシルヴィアは思ったがそれでも彼らがこの場所を選ぶのはひとえに救世主の存在にすがりたいからだ。
それほど、願いたいからなのだ。
「ねぇ、シルヴィア」
『なぁに?』
すでにアドリビトムからここへ来ているメンバーもいるだろう。それでも少しは距離を取っているとは思う。
そんな考えをしているシルヴィアへとシンクが声をかければ彼女は視線を向けた。
「僕やイオンを治したシルヴィアの力と、ここのやつらが崇拝してるやつの力ってのは何が違うのさ。」
疑問を持つのは仕方ないだろう。
その言葉に少し考えてしまうのは、きっともうずっと否定したいことだからだ。
『私の力はそれこそ世界樹が家族を守りたいっていう気持ちなのかな。シンクたちは私の家族だから、私は助けたいとそう思ったの。 この場所に祀られた子も、本当はそうなの。ただ自分の世界を守りたいとおもっているだけ。』
「自分の世界?」
『そう、彼女は別の世界のディセンダー。その世界の希望。ただ、理が違うだけの世界なの』
『ヒトにはそれぞれ掲げる正義がある。だからこそ争いが起きるの。』とそのまま続ければ「僕とイオンの好きなものが違うみたいに?」と返される。それに『単純に考えるとそうだね。』と改めて返して前を向いた。
知りたいことと、知らないこと。知っていたらよかったことと、知らなくてもよかったこと。
本当はたくさんあることをしっている。
けれど、傷ついてもやらなければいけないことが多いことも重々理解している。
「シルヴィア、お前が傷つき過ぎることはない。」
『ミラ。』
「そのため私やジュードがいるのだ。たまには荷を下ろせばいい」
かけられた言葉に、シルヴィアはミラを見る。
精霊として生まれたミラは最近の世界樹のことも知っているだろう。この先のことを知っているかは分からないが、それでもそういってくれるだけ、シルヴィアにはありがたかった。
ただし、その会話もすぐに途切れる。
金属音のぶつかり合う音と共に、悲鳴。その悲鳴が聞き覚えのある声ならば、なおさらに。
「誰かが戦っているようだな。」
『行こう。』
本当ならば接触はしないつもりだったのだが、仮に手間取っているのなら手を貸さないのは道理に反してる。今回はレディアントではなく通常の、ロッドを持ってきていれば、前衛はシンク、中衛はミラ。後衛にシルヴィアとすぐに陣形が決まるのは慣れだ。
#Side Kanonno
もともと、赤い煙についての任務を多くこなしてきて、この間もあと一歩のところで暁の従者に赤い煙、もとい白い結晶のような体をもつ小さな子供をつれていかれてしまった。
だからこそ、止めたいってそう思っていたときに舞い込んできた新しい任務に飛び付いてしまったのはしかたないと思ってる。
ずっとずっと不安にすら思っていることがあった。
今回はクラトスさんも一緒に来てくれるってことで安心はしていたのだけれど、ユーリさんもこの任務に参加したいと言っていたのには驚いた。なにせ、彼はエステルさんの護衛でこの船に乗っていたし、こういう調査みたいな任務に興味を示すような人じゃなかったから。
でも、だからって譲ってあげることもなくて、一番に船をおりた。
うす暗い道を従者に気がつかれないためにその場所の明かりだけを頼りに進むのはとても大変だった。なにより、ほかのところよりも異常に魔物が強かった。どうしてっておもうほど。
一番に驚いてしまったのは、目の前で「ヒト」が生物変化をしたから。
先程まで話していたのに、赤い煙が彼らの体を包んだと思ったらその体は白くそして不気味できれいな形に変わっていた。
理性もなにもなくなって私たちに突然襲いかかってきた相手に、私たちも武器をとるしかなかった。
「カノンノ、下がって詠唱を」
ジェイドさんからかけられる声に後衛に下がる。
グミで温存していたとはいえ、ただでさえ強い魔物と戦ってきててみんなつかれているのに。
早く、回復をしなきゃと、集中しすぎてしまったのがきっと背後を気にできなかった要因だ。
「っきゃぁ!!」
「!」
後ろから突然現れたゴーレムにとばされる。硬い石の腕が防御できていない体に襲いかかった。
こんなのなれているはずなのに、すぐに対応できず転がった先にいたのは変化した従者で。
私に向かって、まっすぐ、まっすぐーーーーー
「集え、地水火風!転ずるが如く!化するが如く!我が剣となれ!スプリームエレメンツ!!」
断末魔。
目の前を真っ白な光が遮った。瞬間体が持ち上げられて重力に逆らって髪がなびく。
「これでとどめだ!はあああぁぁ…!アカシック・トーメント!」
ついで聞こえてきたのはそんな男の子の声。瞬間に下からものすごい光と衝撃音。
一体何が起きてるのかと、頭がぐらぐらするなかで、耳に流れるような優しい声で『大丈夫』と告げられる。
『慈しみの旋律。名の元に。 リザレクション』
そのまま紡がれる詠唱に先程とは違った暖かい優しい光がふわりと私たちを包んだ。
それは敵も味方も関係ない
「ヒィ!?なっ 何だこの姿は!!!」
だからこそ、正気に戻ったからか突然聞こえたのは、驚きの声だった。
それは従者からの声で、ふわりと地面に下ろされて背に隠される。
「あぁ…なぜっ何故だ,何故…こんな姿にっラザリス様っ」
「ラザリス様…助けてくださいっディセンダー・ラザリス様!!!!!」
そのまま、混乱で私たちには目もくれずに彼らは遺跡の奥へと駆け出していった。しんっとした空間の中で『シンク、ミラ。』と私たちを助けてくれた女性があるきだした。
「待ちなさい。」
そんな彼女の目の前に立ちふさがるのはジェイドさんで、まっすぐにその槍を彼女に向けていた。私の位置からは彼女の顔は見えない。でも、この後ろ姿を私は
「シルヴィア、さん?」
私は、知ってる。
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