「大変だ!!!!」
日常に響くのはいつも驚きに溢れる叫び声だ。
それはバンエルエィア号で重々承知していたのだが、まさかこんなところまで付いてくるとは正直シルヴィアは思っていなかった。
バタバタと彼女の元に駆け寄ってくるのは今日街に買い物と情報収集に行く予定のメンバーだった。
4人居る男の人の中で、二人は何かを抱えているようだ。
「どうした?さっき出かけたばかりだろ?忘れ物か?」
そんな彼等にキルが問う。
息を切らして戻ってきた彼等を見る限りかなり緊急性の高いものなのだろう。
そばに居たジュードとミラに目配せしつつ、彼等に近づいていけば「シルヴィアさん!ジュード!お前たち治癒術は使えたよな!」と何かを抱えている男が叫ぶ。
心底慎重に、
ゆっくりとしゃがんだ二人が腕の中の布・…というよりはマントだろうか。ソレをまくれば、現れたのは、白。
「っなんだこいつら!」
驚きに声を上げたのは、集ってきていた野次馬だ。
肌はまるで雪のような白。歪な結晶を額から生やし、苦しそうに目を閉じている。
それは二人の少年だった。
そして、それは、シルヴィアにとってとても見覚えのある・・・
『・・・やっぱり・・・はやい・・・』
彼女の記憶の中で逆算されるのは今がどれぐらい進んだかということだった。
それでも、やはり従来よりも早いと決断付けるのは、彼女には時間がないからだろう。
しゃがみこみ、腕の中のその存在を不安そうに見つめる二人に近寄ったシルヴィアをミラは静かに、ジュードは不安そうに見つめる。
「シルヴィアさん、こいつら、ヒト、だよな・・・これは疫病か、なんかなのか?なぁ・・・っ」
『大丈夫。』
そんな彼女に、すがるようにいう彼に、にこりと笑った。安心させるように、優しく、優しく。
普通のヒトならば、これは異常だ。
それを大丈夫と一言で証し、エミを浮かべる彼女をどう思ったのだろうか。
『この子達は、何も、悪くないの。』
静かに胸の前で手を握れば、ふわりとそこから光が生まれる。はっとして目を見開いたのはキルだけじゃない。
その光はどんどんと強くなっていく。
『大丈夫、キミ達は私の__だよ。』
ポツリ呟かれた言葉と一瞬の、白。
光が晴れれば、彼等の腕に抱かれていた少年達は、ヒトらしい姿に戻っていた。
緑色の髪を持ち、くたりと眠ってしまっているのだが、それでも先ほどとは違い、しっかりと呼吸をしている。
もう、彼等はこの世界の住人だ。
「っ今の・・・っ」
『ジュード、二人にほかに外傷がないか診てあげて?』
唖然としている周りをスルーし、平然とシルヴィアは告げる。
数拍おいて、はっとしたジュードは「わ、わかった!」少年達を抱えている二人を促してロッジへと向かった。
静寂、静寂、静寂。
『・・・ごめんなさい。みんなに黙っていたことがあります。』
一度謝罪を入れてから、シルヴィアは顔を上げ立ち上がった。けれど、謝罪の言葉とは裏腹に、その瞳はしっかりと自分が守りたいものを、自分が大切だと思っている存在を映している。
風が優しく吹き、髪を揺らす感覚に浸りながら、一度息を吐いて、また吸った。
『私は、ディセンダー。世界の危機に対して世界樹から生み落とされた守護するもの。惜しみなく、すべてのものに光を分け与えるもの。
・・・騙していて、ごめんなさい。』
子供を授かりたいと願った二人がいました。
その願いはある日突然叶えられ、二人のもとに緑の髪の双子の赤子が現れました。
二人は喜びました。
天が聞き届けてくれたのだと。
しかし、赤子の成長は酷く早く、だんだん二人は恐ろしくなっていきました。
周りの目も気になっていきました。
だから、
捨ててしまおうと思ったのでした。
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