彼女にとって毎日がとても疑問だった。
どうしても、ヒトの手が必要だと…そうした時にキルが連絡し募ってくれたのは、親族たちだった。
元々ディセンダーを祀っていた一族と言うだけあって、彼らは等しく平等だと…そう思ったのは個人的な意見。
それともう一つキルの親族が来てからはとても生活感があふれるようになった。
ベースとなる拠点が建てられ、それはすでに3件目に突入している。ガルバンゾが「洋」とすればそれは「和」でもなく。
どちらかといえば山小屋のような…けれど住むには十分。これからいろいろ運び込めばなんの問題もなくなってくるだろう。
ヒトの力とはすごいものだ、と思うが彼らから見れば魔物を追い払うシルヴィアのほうがすごいだそうだ。衣住食、と三元素あるなかで二つは埋まったが次の疑問は「食」
食べ物を買うことについては、アドリビトムでもやっていたことだったから特に疑問ではなかったが、なぜ「それ」ができるのか。
木は木として育てばアップルやオレンジは出来ると知っていたが、今作っているものはそういうものではなく…キルの仲間が地を掘って、「何か」を作っている。
柔らかくなった土を盛り上げたり、へこませたり。そして何か小さな粒をまいているその行動が理解できなかった。
『ねぇ、あれは何してるの?』
口に出したのはその言葉で、それは偶然近くを通った青年に向けて。
そうすれば、彼はきょとんっとしたがシルヴィアをみて、作業をみて、納得していた。
「シルヴィアさんは都会暮らしだったのかな。あれは食物を作るための作業だ。野菜や果物は森から収穫してるだけじゃ間に合わないし頼りすぎていてもいけないからね」
『そう、変なこときいてごめんなさい。ありがとう』
疑問は尽きないが、そのたびに人に聞かないからかもやもやがたまっていく。
ヒトに頼ることを忘れてしまったシルヴィアにとって、「信頼」が失われることがある種の恐怖で、頼りすぎるとその信頼がうしなわれてしまうと、そう考えてしまったのだ。
一言お礼を言って、その場をさった。
「どうした?」
「え?いや、あの子さなんかあまり物を知らないっていうか…」
まるで、昔聞いたディセンダー様のように何も知らないなって
*** *** ***
彼は水路を作りたいと言っていたから、その言葉を思い出してキルのもとへと来ていた。
飲み水は井戸を掘るとわからないことを言っているのも聞いた。外の世界はわからない不思議なことだらけだと改めて思う。知らないことが多すぎる。
『キル』
そして、何かっていうと「女だから」という理由で力仕事はさせてもらえない。
彼らにできない魔物退治は出来ても、彼らのやりたいことの手伝いは「女」だからとはじかれる。
「シルヴィア、どうしたの?」
『何か手伝いしたくて。』
「はは、女の子だから力仕事はいいよ」
ほらまた、これだ。特別扱い。
区切られる自分が酷く孤独だった。アドリビトムは平等だったから、おそらく余計なのだろう。
『魔術なら使える。水路って水の通る道てことでしょ』
半ば、ヤケ
わからないから「できない」ことが嫌いで嫌で仕方なかった。
魔陣が足元に広がる。キルが驚いたようにその光に目を開き
『っ大地よ、我が名のもとに力を示せ!!グランドダッシャー!』
次いで衝撃に後ろに倒れこんだ。
地面が盛り上がり、道が出来る。久しぶりの感覚にシルヴィア自身も眉を寄せる。
マナの影響か、それとも否か、グラグラとわずかに地面が揺れたが、土煙がおさまるころには技の影響で深くほりさげられたその道が出来ていた。
「…シルヴィアやりすぎ。」
『女だって甘くみるからでしょ』
にっこりと、キルの言葉に笑って見せた。
それはディセンダーではなく、彼女の力
Re20210122
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