今までよりも物語の進みは早いかもしれないと感じる。
彼-レイヴン-から聞いたことでいろいろと考えることが増えたのは仕方がないことだった。事実求めていたことを手に入れられたのはありがたい。
情報を聞き、次いでキルへアドリビトムにガルバンゾ近郊へ来てもらえるよう手紙を出してもらった。これはレイヴンたちをアドリビトムへ接触させるためだ。
ついでに言えば、その時キルの店にアドリビトムからシルヴィア宛てに二通の手紙が来ていたのだが…。その一つはユーリ。
よく発見されて押収されなかったと思うが手紙の中まで騎士団も見ないだろう。
もう一つは、クラトスからだった。
彼からは世界の情勢のことや難しいことも多かったが、最終的には元気にしているか?と心配も込められていて、シルヴィアの心にわずかに寂しさが宿ったのはきっと仕方がない。彼女も半分はヒトだから。
「シルヴィア、何かわかったことがある?」
『ん、いろいろ知りたいことわかったから。とりあえず早く行動しなくちゃね。』
キルの言葉に微笑む。
町で調達した馬車はこれからある種、重要なものになる。
傷ぐらいは治癒術で、病は難しいが…でも赤い煙は入れない、世界の楽園を作らねばと…
四次元ポケットのような鞄の中に入っているのは今まで手にしてきた純星晶。
これを砕き森にまけば、きっと結界のような役目をしてくれるのではないか滅びた種も住みやすさを求め再び芽吹くのではないか、なんて、わずかな夢を持つ。
現代的な同じような便利さは、作りだせないだろう。
けれど命を感じ、一日の大切さを、生きることを感じることがきっと便利さよりも大切なんだろうと…
『(ディセンダーなんて…)』
本当はこの世に必要はない。
生まれる必要は本当はなかったんだ。と笑って言えたらどんなに楽で、どれだけ自虐なのだろう。でも、「私」が「ディセンダー」として生まれなければ…自由に生きられたら
「家族」という存在の中で成長することができたら「私」はどんなヒトになっていたのだろう。
ヒトとの根本が違うからこその、シルヴィアの疑問。
でも、どうであろうと変えられないから、ここに生きているんだろう。
『ねえ、キル。あなたはどうやって育ったの?』
疑問を口にすることは避けてきた。それは、「無知」を悟られないため。
けれど。それでも「今」は知らないことが多すぎて、知りたいことも多すぎて、求めたいと思ってしまうのはきっと「ディセンダー」の性なのだろう。石に躓いてがたりとわずかに馬車が揺れる。
「そうだな…。俺の親父はすごく厳しい人だったよ」
けれどそれを気にもせずに、キルは口を開き話し始めた。それはシルヴィアのしらないこと。そんな知らないことを何一つ聞き逃さないように、そっと目を閉じた。
人は生まれ、人は死ぬ。
子を育み、子に看取られる。
そしてその子がまた、命を育んで…そうして命が続いていく。
その理に、のれないからこその
Re20210122
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