ユーリ達がガルバンゾ国から行方知れずになって、エステルも絡んでたから一気に問題が広がった。
その数日後、宿のおかみさんからユーリからの手紙をもらって「お前は一人じゃない」なんてたった一言書いてあって…。私の記憶もない癖に、覚えてない癖に、って少しひねくれる。
それともう一つ。当たり前のことだが、私が喫茶店でユーリ達と接触して目立ってしまったことが招いたこと。
「ちょっといいか、シルヴィア。」
あぁ、でもそうなるわよね、と思ってしまうような光景が目の前にある。
宿を出れば待ち構えていたのは、白。
『えぇ、どうせ彼のことでしょう?』
騎士団が私のもとへ来るとはわかっていた。隣がユーリ達のいたギルドってのもあるけれど、彼と私が一緒にいたことを知っているから。
きっとフレンも私が何かを知っていると思って私のところに来たんだろう。
『上がって』
「いや、本当に気にしないでくれ。」
『最近、静かで寂しいのよ』
くるりと身をひるがえして宿の私が借りている部屋へと促す。
この間ユーリのとこがあるからあの時のカフェにもいけないし、ただでさえ変な噂を立てられる。それはフレンにとってよくないものだろう。
黒と銀、金と銀。
どちらにしても私たちは目立ってしまう。いや、もう一つあるならここはユーリとフレンの故郷だから、余計目立つんだろう。
『珈琲?ココア?それともシーフォ隊長は紅茶かな」
部屋に招き入れて楽にさせる。彼は隊服を着ているときは自分にとっても厳しい。
だけれど、人の目がなければ彼は自由だ。騎士団長じゃない、ただのフレン・シーフォ。私は彼と話がしたい。
『フレンは固いよ。リラックスリラックス』
「シルヴィア、僕は」
『遊びに来たんじゃない、って言いたいんでしょ?わかってるよ、でも少しは肩の力を抜きなさい』
『ここ、すごいことになってるわよ』とこつんっと眉間を一度こづいてやれば彼は驚いたようにきょとんっとした。ふぅっと息を一つはいて苦笑いして、いつもどうり。
「かなわないよ、シルヴィアにはね。」
『固いの、あんまり好きじゃないの。紅茶入れるね。アプリコットでいい?』
「あぁ。」
くすくすとお互いに笑って、彼に座るように促してお湯を沸かす。そんな私の様子を見て、彼は白い鎧の手の部分を外して、剣のベルトをも外していた。
『あぁ。ちなみに私は何も知らないわよ』
「期待はしてないよ。シルヴィアならそう言うと思ったから」
「君は、ユーリに甘いからね」なんてつけたされてすこしむっとする。いつ私が甘やかしたんだろう。
関係はないかもしれないけれど、物語上、まだ彼に伝えるわけにはいかない。何が起こるかわからないからこそ、私は、
「シルヴィアは無意識かな。」
『間違いだと思うのだけれど。』
フレンは笑うけれど、こっちは迷惑だ。
彼にそう見えていたということは、周りにはもっとそうやって見えているということだ。
嫌な予感しかしない…
「ねぇ、シルヴィア。」
『なぁに?』
名前を呼ばれて振り返る。フレンは私を見ていて、不思議に思って首をかしげる。彼は逆に私から視線を外したけれど。
「前に、さ、僕に君は言っただろう、人間はあいまいに生きてるって。」
彼の口から出た言葉は、いつぞやのことだった。確かユーリを迎えに行ったときに話した内容だと思う。どうして今それを、と思ってしまったけれど彼は彼なりに悩んでいるのだろうかとおもい、果物をおいて彼の前に座る。
「シルヴィア、君はなんのために生きてるんだい?」
彼が、そのことを聞くかなとは思ったけれど、こんなに直球に聞いてくるとは思わなかった。一瞬考えてしまったけれど、でも、笑う。
『なんのため?生きるため、かしら』
「そういうんじゃない。」
『ふふ、冗談だよ。そうねぇ…』
くすくす、くすくす。笑ってしまう
フレンに怒られてしまったけれど、でも、私から見たらそうなのだ。何よりも、私は…
『…普通を、生きてみたい。この世界の中で当たり前のような幸せを手に入れてみたい。特別特化したような幸せじゃなくて、愛したヒトと世界樹を眺めながら子供を育ててみたい。救世主とか、英雄とかそういうのにはならなくていいから当たり前にヒトみたいに生きたいの。』
そこまで言ってたら、本当に私は人じゃない見たいな言い方になってきたから、苦笑いしてしまう。でも、普通に生きたい。私は、ただそれだけが願いだった。あきらめてしまったような夢だったけれど…。
『こんな私は変かしら。』
にこりと、笑って見せた。
ただひとつの思いが大切だったあのころの私はひたすらにディセンダーを演じて生きてきた。それが、今だとまだ必要ないから、私は笑っていればいい。
「シルヴィアは、不思議な考えをしているんだね、」
『そう?』
「うん、ユーリが惹かれるのもわかる気がするよ。ユーリもいろいろ迷って生きているから。」
フレンが言う。その言葉が不思議だった。
私の知るユーリは、一回目は確かにいろいろ悩んでいたようだったけれどでも、私とかかわらなければ彼はまっすぐ生きていた。二回目のころは私を気味悪そうに見ていたし、それが酷く心には刺さったけれどでもそのおかげで覚悟が決められた。だから、今の私がある。
「ユーリは、騎士団時代に大きな怪我をしたことがあったんだ。君みたいな白い髪を持った人が騎士団に訪ねてきてね。ユーリを連れていったかと思えばぼろぼろになって帰ってきた。でも、ユーリはそれから人が変わった様にまっすぐ前を見るようになった。」
『ふぅん。』
手が、止まる。だけどお湯が沸いたから、ポットに茶葉と一緒にお湯を入れて、トレーにティーカップを二ついれて机に運ぶ。少し蒸らした方がいいと教えてくれたのはロックスだったけれど、今もそれは私の中では変わっていない。
「ユーリはずっと、シルヴィアを探していたと僕は思うんだ。」
『お口が上手ね、フレン。残念だけれど私はユーリにはこの間初めてあったの。そんなことないわ、世界には似ている人がたくさんいるから』
かちゃりと音を立てる。
あぁ、本当にこっちの気も知らないで言うなぁなんて、思うから私もいっそ言ってやろうかと思うが
『フレン、ひとつだけユーリ達が何をしようとしているか、教えてあげる。』
ふぅっと息を吐く。
じっと彼を見れば彼は少し驚いたように目をぱちくりさせていた。
『エステリーゼ様は、何に関心があって、何に悔いていた?』
「え?」
まぁ、私には所詮人間。私に罪を与えることはできない。静かに言って、またじっとフレンを見る。
彼は私と目を合わせると「どういうこと…?」と続ける。
二人だけの室内静まる。
私はまた、息を吐く。
『簡単な話、彼女は知りたいの、世界の行く末を。』
私が今言えるのはそれくらい。
それにしても、フレンはユーリの個人情報をよくまぁ私に話したものだ
Re20210122
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