「颯斗、突然学校変えようなんてどうしたんだよ」

「なんとなくだよ、なんとなく!」

「本音は?」

「あいつらねちっこいやん。
 いちいちいちいち何様のつもりやっちゅーねん

 って何言わすんだアホ!!」

「はは、相変わらずのノリ突込みだな」



晴天。
隣で銀色の髪を揺らして昔からの戦友は笑った。

今は教師仲間だ。

驚いたことに颯斗が俺の家の近くに越してきて、そのまま母校も一緒、
まるで昔のような生涯だが今は昔とは違って平和だ。




「ん?」



昔よりも聴覚は衰えたが、ふと聞こえた声に顔を上げれば一瞬だけ見慣れた色が掠めた。

本当に一瞬だけだ。

まさか、と思ったが颯斗は気にしてもいないようで「ここは楽しいといいなー」なんて笑っている。
俺の・・・気にしすぎだろうか。


だが、そう思っていたのに、次に見えたのは、茶。

俺が佐助の瞳を覗き込んだ時に見えた、あの影と同じ、
髪を一房だけ伸ばしている学生がフェンスに寄り掛かっていた。



「(まさか、な・・・)」



探した
探したさ・・・大切な教え子を・・・

颯斗もきっとそうだろう。
俺はあの子一人だったが、颯斗には二人心に残している弟子がいるのだから。

まぁ、この職業に就いたのももしかしたら、というのがあったのかもしれない
数多くの生徒を見てきたが、「先生」と呼ばれてもどうも実感がわかなかった。


まぁ、もう過ぎてしまったことなのだが


『憧れでも、家族としてでも無いんだっ
 俺様は、先生が・・・っ猿飛終夜っていう忍が、一人の人が・・・っ』



ふと、頭の中に浮かんできたその映像に、苦笑いしてしまう。
俺はまだあのこのことを引っ張ってしまっているんだ。



「終夜?」

「おっと、悪い悪い。
 挨拶行かないといけないもんな、」

「そうそう、しばらくはどうせ新任だからって回されるよなー」

「はは、そういうのは苦手だ。」


苦笑いして歩く。
職員玄関兼生徒達の下駄箱に入れば、颯斗が小さく「あのさ、」と声を出した。
でも、だ、


次の瞬間、颯斗の銀色の髪に混ざるように金色が輝く。
若干悲鳴のように颯斗の名を呼んだのはあまり会う機会のなかった、でも、颯斗にとってはとても縁のある子で



『せん・・・せ・・・?』



呟くように聞こえてきたその声に、はっとして振り返った。
この学校の制服だろう。

昔とはほど遠い服を着て、規定よりも多分短めのスカート。
俺が知るよりも短い髪。

でも色も変わらず、今はカチューシャで髪を止めているらしい


トンっと、背が押されて一歩前に出た。




『っ先生!!!』




そして、飛び込んで来た夕日色。
俺が知ってるよりも成長してるが、それでも、まだ小さい。

だが・・・間違いなく、俺が探していた






「っ佐助・・・」



大切な、教え子
ぎゅぅっと、抱きついて離れない佐助の背に手を回して抱きしめる、


こんなところを見られたらいろいろ勘違いされるだろうが、だが、本当に・・・
ここにいた・・・



そうか、だから・・・



「(颯斗は・・・このことを知っていて、学校を・・・)」



本当、ある意味すごいよ、颯斗は

執筆日 20130616






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