苦しいよ、
お前は物理的かもしれないが・・・俺は心が・・・
佐助を見れば、その目に映る俺は、いつも無表情を、それから笑顔を作っているにもかかわらず感情をあらわにしていた。
これで忍の頭、なんていったら笑われてしまうかもしれないが・・・
『先生、先生、俺様を一人にしないで・・・っ』
「・・・、佐助。」
『俺様の、気持ちが届いたんならっ』
ポロポロと、佐助の涙が俺の着流しを濡らしていく。
そんな佐助の頭の後ろに手を回せばまたしっかりと視線が合う。
佐助は涙を流しながらきょとんとしていて、そのまま佐助を引き寄せて、その唇に口付け落とす。
驚きからか、戸惑いからか、小さく佐助が震えた。
触れるだけだったけれど、柔らかいその感触に、もう、いいか・・・なんて思った。
佐助の頭を撫でれば、気持ちがいいからか、目を細める。
「俺も」
そんな佐助にそういえば、細めていた目を驚きからか開いた佐助。
苦笑いをして、「つむっていたほうが、よかった」なんて言ってしまえばもう止まれない。
抱き寄せて、今度は深く、深くキスを落としていく。
舌を絡め、逃がさないように引き寄せていれば無意識なのか、首に腕がまわされた。
きつく、抱きしめて、逃がさない。
『ふ、ぁ・・・』
「・・っ・・」
口を離せば足りなくなった酸素を精一杯吸って、ズルリっと力尽きたのか、俺の肩に頭をのせて、苦しそうに息をする。
無理を・・・させてしまったか・・・
なんて思ったが、小さく呼ばれれば、後悔の念が押し寄せてくる。
「ごめん、ごめんな、俺は、こんなことを思っちゃいけない。」
『ね、先生・・っ逝かないで・・・っ』
謝って、そんな佐助の頬を伝う涙を舐め取った。
けれど、そんな風に言われたら、揺らぎそうだ。
だが・・・
佐助、
お前に、最後に、最期に・・・言わなくちゃいけないことがある。
スッと、ちゃんと佐助と向かい合い、微笑む。
けれど、コレは、佐助の「先生」としての顔だ。
「・・・佐助、これが最後だ。
揺るがないから『思い』なんて言葉がある、揺らいだら、それはもう、『思い』じゃない。」
『え・・・』
俺の言葉にきょとんっとしたように顔を上げた。
揺るがない思いこそ、想いというもので
揺るいでしまえば、もう二度と、思いなんていえない。
それだけは、知っていて欲しい。
執筆20130127