蝋燭を立てれば暗い部屋に儚い光が灯る。
佐助はすでに、布団を敷き終わっていて、忍具の手入れをしていた。
でも俺が入ってくれば、それらを片付けて、パタパタと部屋に置きに走って行った。
その後姿を、見ていられなくて視線をそらして、ボーっとしていれば戻ってくる。
でも、それ以上部屋に入ってこなかった。
『・・・先生。』
けれど、そう、佐助が俺を呼ぶ。
「ん?」っと、その方向へと視線を向ければ不安そうな、今にも泣きそうなそんな顔で、佐助はそこに立っていた。
けれど、俺に手を伸ばし、抱きついてくる佐助、
そのまま、首元にある昔の古傷へと触れた。
「どうした?」
これは、佐助がつけた傷だ。
俺と、佐助のきっかけ。
膝立ちになった佐助を見上げれば、やっぱり泣きそうな顔をして、そっと手を伸ばして頬に滑らせれば、子供体温というか、あったかかった。
『ねぇ・・・先生・・・俺様にとっての先生ってどんな存在だと思う?』
なんて、思ってたら、いきなり言われた。
佐助から、そんな質問が来るのが珍しくて、名を呼べば、柔らかく、けれど悲しげに佐助は笑っていた
『あの時、先生は俺様を殺したんだよ。
皮肉に、狂っていた俺様を殺して、本当の俺様を引っ張り上げてくれた。』
けれど、その言葉にホッとする。
佐助を救えたのなら、俺はそれで言いと思う。
たとえ、その先に俺が居ずとも。
『先生・・・俺様、
っ俺様、明日の任務のこと、知ってるよ・・・っ』
けれど、そういわれた言葉に、固まった。
否、平然を装ったけれど、いままでで一番、動揺したと思う。
動揺なんて、佐助の前以外の前で、したことなかった。
何時、どこで、佐助は任務のことを知ったのだろうと、頭が回る。
唇をかみ締めて、頬に這わせたその手を握り締めた佐助は、今にも泣きそうだった。
「佐助・・」
『せん・・・せい・・・っ』
「おいで、」
だから、呼ぶ。
今は、あのときのように、溜め込まなくていい。
そう教え込んだから、佐助は俺に心を許し、そして、スッと移動してきて、俺の首に腕をまわして、すがりついた。
肩が濡れる。
泣いているんだ。
分かってる。
もしも、本当に任務の内容を知っているのだとしたら・・・
佐助にとっては、酷く、酷なことだろう
執筆20130126