城下町に行った。
それから森の中で一緒に走り回った。
いつもよりも、ずっとずっとそばで走った。
先生は何も言わなかったけれど、でも、どうしてかいつもよりも優しかった気がする。
でも、やっぱり時間は早いもので、
もう夜で・・・。
いつものように、布団を用意して・・・
だけど、先生は、ずっといつもと変わんなくて。
まるで、死に逝くのが当たり前のようで・・・平然としてる。
でも、先生、どうして?
先生には、未来を視る力があるのに・・・
知っているはずなのに・・・
どうして、安心させてくれるような言葉を・・・言ってくれないの・・・?
『・・・先生。』
小さく、
呟くように呼んだら、「ん?」と不思議そうに俺様を見た。
布団の上に、後ろ向きに座っている先生の背中に手を伸ばして、抱きつく。
首にある俺様がつけたその傷に指を這わせれば「どうした?」なんて返された。
もともと、目が合っていたけれど、立ち上がれば、自然と上から見下ろす形になる。
先生から伸ばされた手。
それが俺様の頬を滑る。
その腕にも、俺様がつけたその傷があった。
『ねぇ・・・先生・・・俺様にとって先生ってどんな存在だと思う?』
「佐助?」
『あの時、先生は、俺様を殺したんだよ。
皮肉に、狂っていた俺様を殺して、本当の俺様を引っ張り上げてくれた。』
それから、先生の目を見たまま、そういえば、フッと微笑んだ。
先生の手から伝わるその熱は、俺様より低いから、冷たい・・・。
でも、これ以上・・・低くなったら・・・どうしたらいいんだろう・・・。
『先生・・・俺様、
っ俺様、明日の任務のこと、知ってるよ・・・っ』
「ん?」
かすが、ゴメンね
俺様、約束破っちゃう。
『いっちゃやだ!! ここに居てよ、先生!!』
この手を、離したら先生はどこか遠くへ行ってしまうことは、わかりきってる。
先生が出陣をやめればもしかしたら、颯斗さんだって他の忍だって助かるかもしれない。
唇をかみ締めて、頬に添えられているその手を握った。
「佐助・・・」
『せん・・せい・・っ』
「おいで、」
先生の言葉に、体が自然に動く。
すがるように先生の膝の上に移動して、正面から、抱きついた。
ぽろぽろと、涙がこぼれる。
俺様、こんなに泣き虫じゃないのに・・・
弱くないのに・・・
それでも、すがるのは・・・俺様が・・・
執筆日 20130126