目の前を掠めた銀色。

それは俺のよくしる、髪の色。


「っ颯斗?」



小さく名を呼んだが、次に目に入ったのは庭に転がった夕日色



『っア・・・ぅ・・・』


小さくうめいて、腕に突き刺さっていた針を抜き取った。
ポタポタと、その部分から赤い液体が流れていく。


そして、ユラリっと立ち上がる。



だんだんと、光の宿っていたその瞳が、再び闇に染まっていく。



颯斗の武器である、針

それの刺さった、腹から、足から、腕から、


とめどなく血が流れ、そしてそれは地に落ちるとうごめく闇となっていく。

・・・これは・・・




『・・・あはー・・・やっと殺してもらえんの?
           俺様・・・大感激・・・



「終夜・・・あいつ・・・」

「っ婆娑羅者・・・だったのか・・・」



ユラリ、ユラリ。


その力を知っている。
力のあるものが所有するその力


それを・・・こんな小さな・・・小さな子が・・・



『なぁに・・・俺様が攻撃しないとしてくんないの・・・?』



目を細めて、片足を重心に、立つ。
両の手に力をいれず、脱力しているそれは、重力にしたがってゆれる。



それから、まるで風のようにタンッと地面を蹴ると、抜き取ったその針を片手にして、それを俺へと投げた。

幸いなのは、颯斗に投げなかったことだ。


まぁ、それはものの見事に俺に刺さったのだが




「うぉ!!」

「颯斗!

 っ落ち着け、もう大丈夫だ、大丈夫だから!!!」



婆娑羅の能力で目覚めたのであろう、その闇の影は、人の形を持ち、そして颯斗を襲った。

もともと、俺を殺すために、生きてきたようなものだった。



だから、標的を俺だけに定めたんだろう。





心を闇に食われ、風を纏い、俺の元へと来た小さな忍。
いつぞやの短剣を出して、それを片手に、俺へと飛び掛ってくる。





「終夜!!」



首をえぐるように、それは俺の首へと刺さり、

足の痛みからか、バランスを崩した為に、俺へと倒れこんできたその小さな身体を受け止めることも出来ず、



二人して障子を突き破って後ろへ倒れた。



「ぁ・・・っ!!」



衝撃で、深くえぐられた刃に、息が詰まった





執筆日20130125