俺が危害を加えない人間だと、やっとこの子は分かってくれたらしい。
ただ、何をしても笑って済ますようになったのは、少し計算外だったが・・・
まさか・・・
『・・・離してくれない?』
俺の自室まで入ってくるなんてな。
本当・・・
「離したらどうするんだ?」
『死ぬだけだけど。』
クナイ片手に、何やってるんだか。
首筋に添えていたそのクナイを掴めばそういわれて、ため息を付いた。
「なおさら離せねぇな。」
死ぬだけ、と、簡単に言ってのけるこいつは、やっぱりうん、いろいろ飛んでるな。
だけど、視線を地面に落としたと思ったら
『ねぇ、俺様も忍もどきなんだよ・・・』
しゅっと視界から夕日色が消える。
けれど、次に、クナイが飛んできた。
頬をかすっただけで済んだが、視界から消えた夕日色は、俺の手の拘束を解いて、両手にクナイを持って俺から距離をとった、
「あぁ、分かってるよ。」
『俺様のこと、さっさと殺せばよかったね。』
「そんなこと、思ってないよ。」
身を低くして、俺を威嚇するように睨んでいる。
多分、俺と同じ気持ちだ。
俺も、人は早々簡単に信用なんて出来ない。
昔、信用なんて出来なかったから。
それから、どんどん投げられるクナイ。
でも、交さない。
ただ、ただ、体力を使い果たしてしまったらしい、肩で息をしていて、
そっと、クナイを落とした手を握って、抱き上げる。
あれから大分平均体重まで戻ってきたとは思うけれど、まだ細い。
『・・・に、すんだよ・・・離せ・・・っ』
「強く掴んで悪かった。
怪我は無いか?」
『そんなの・・・』
でも、やっぱり、ちょっとツンツンしてるな。
だけど、
「(少しずつ、心開いてる感じはするんだよね・・・)」
執筆日20130124