俺の声に反応したのか、ゆっくりと顔をあげ、そして視線が合う。

生きている。


そう分かった俺は、檻に近づいて、子供の目線までしゃがみこんだ。



「大丈夫か? 今、出してやるからな。」



それからそういって、檻を破壊しようと、手を伸ばしたが、その小さな子供の口が、かすかに動き出す。

何かを言おうとしている・・・?




そう思って、耳を済ませれば、


はっきりと聞こえた







さっさと・・・殺してよ・・・




はっとして、目を見開けば生きることに疲れたような、呼吸をすることすら、めんどくさそうな・・・そんな、世界に絶望した目をしていた。


そして、スッと、檻の前にささっている刀を・・・そして肉塊を次々に指差す。


すでにビショビショの体だったが、髪から頬に落ちた雫が、涙のように・・・伝って言った。





『そばに、逝かせて・・・・ッ』





昔、同じことを言った少年を、俺は知ってる。

この子も、きっと、すべてから拒絶され、拒否され、孤独になり、本当の自分を・・・




バキッ!!




それを、もう、聞きたくなくて、檻を破壊する。

金属の破片が、小さなその子の身体を傷つけないように、注意しながら。


身体に力が入らないんだろう、その身体を抱き上げて、身をひるがえす




「誰が、子供を殺すか。

 俺より年下のクセに・・・


   生意気なこと言ってんじゃねぇよ」



呟くように、吐き出したその言葉は、この子の心に届いただろうか?



この子を、人里に帰してやりたかったが、このまま手放せば、きっと、堕ちるところまで堕ちて、そしてもう這い上がれず、


結局は死んでしまうだろう。




ぐったりとした、その身体は、細く、頼りない。



けれど、緊張が切れたのか意識を飛ばしてしまったその小さな身体をこれ以上冷やさないように抱きかかえなおして、颯斗たちに合流する為に走り出す。




「生かして、ごめんな。」




その言葉は、きっと、風のみが知る。






執筆日 20130124






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