この世界は、一体どうなってしまった?
呼び出されて、連れてこられたのは、テニス部ではなく男子サッカー部だった。
何故、なんて思って。
『一体、コレを私に見せて、何になるというのかしら。』
眼科に広がるのは荒れたサッカー部の部室。
テニス部のように全国区までの成績は無いものの、関東では一応名のしれているレベルだ。
だからこそカップや賞状は多いが、それらがすべて床に散らばっていた。
壁には切り傷。ドリンクボトルは散乱し、粉までこぼれている。恐らく白かったタオルはそれらにまみれ、本来の色を失っている。
サッカーボールは切り刻まれ、つぶれてひしゃげていた。
「跡部、お前部室の鍵の管理してんだろ!」
「どうなってんだよ!!」
そして、浴びせられた非難。はっとして振り返れば、私を連れてきた部員が、私を睨んでいた。
『確かに、私は部室の鍵を預かっていたわ。でもお前達の部長である速水だって』
だが、私以外にも、鍵を使う人物は大勢いる。
特にと、サッカー部部長であり、副会長でだったあいつの名を出せば、さらに、睨む視線が強くなる。
「跡部って、そんな奴だったんだな」
「なんか、俺、勘違いしてたわ、」
ー跡部って、自分を支えてくれてる副会長のこと、そんな風に思ってたんだな。
ーーー俺たちはお前の手ごまかよ。
通りすぎ様に言われた言葉が刃になり心に突き刺さった。
テニス部の私が、サッカー部でなぜそんな言葉を浴びせられなければならないのか、疑問でしかないのだが、
『・・もう、終りね・・・』
小さく呟いた言葉は誰も居ないからこそサッカー部の部室に響く。私はもう、女王なんかじゃない・・・ただの、女。
ただの、テニス部の部長。いや、今の状況で言えば、部長ですらないのかもしれないけれど。
ただの、たった一人の生徒。
「だれだよ、ドア開けっ放しに…って、は?跡部!?」
なんて、1人で考えていたら、かけられた声
そしてそれは驚きに変わった、
『・・・速水か・・・』
小さく名を呼べば、私の肩を掴んだ。部室は、一度も見ていない。
「どっか怪我してねぇか? 大丈夫なのか?」
『・・・えぇ、大丈夫・・・』
そして、私にかけられた声に、あたたかさを感じる。ギリギリと、肩を掴んでいた手の力がこもる。
『それよりも、貴方は私より、この部室を心配するべきだわ。私のせいで荒らされたようなものらしいっということで、私は呼び出されたんだもの』
「!」
『だから、そこまで信用が下がったのかって、私は、もう、必要ないんだ』
「!!」
思わず、笑ってしまった。
私がそんな行動をとったからか、速水は固まる。
あぁ、自然に今の私は笑えていないんだろう。
じわりと目の奥が熱くなる感覚に、速水の腕を払い除けて距離をとった。
『速水悪いんだけれど、今後の生徒会を…氷帝をどうかよろしく』
終わるのであればさっさと捨ててしまって正解だった。
何人にしか告げていないことではあるが、私にそれを伝える義理はない。
『後は、頼んだわ、速水。』
04.青年の名
彼の名はタンホイザー
刺激を求めた男
そして、その男は・・・
再1904
←
→
list
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -