先生達の視線が刺さる。
すべての理由を知ってしまったいまだったら当たり前かと表情を崩すこともしない。
今は朝の職員会議、朝練の途中で放送で呼び出され、ジャージのまま職員室にはいりここにいる。繰り出された質問は、やっぱりあの日告げられた、生徒会への、ひいては会長である私へのことだった。
『私は、何も指示をしていません。もし、生徒会の中にそのような人物が居るのだとしたら、管理しきれていなかった私の責任です。しかし、生徒会の中にそんな人物はいません。皆、生徒のみんなに安心して学園生活を送ってもらえるように、励み努力しています。』
けれど、私の答えは決まっている。たったひとつだ。
そもそも、生徒会室の鍵を持っているのは私と生徒会の教師であり都合でいけなくなったときに代わりに渡す生徒会委員だけだ。
のつど、開けたら返しに来る。だから、長時間手元にないことはほとんどと言ってない。だから合鍵を作れる時間も無いはずだ。不法侵入なんか出来るわけが無い。だからこそ、私が疑われているんだろう。わかっているさ、管理している人間が一番怪しいなんてことは。
私の言葉に水を打ったように静かになった職員室。すぅっと深く息を吸ってから、もう一度、全体を見回した。
『今回、このような会議に、このような内容で生徒会が呼ばれたことは恥です。以後、ちゃんと確認してからよんでください。私たち生徒会のメンバーの中に、そんな考えをする人間は1人も居ないということをお忘れなく』
これが、私が会長として、ここに立った最後の会議。
打ちこみ、打ち込み、息が切れても関係ない。正直、今は何も考えたくなかった。
頭に残るのは「どうして」という疑問だけだ。私が一体何をしたというのか?上に立つ人間として、したの人間を守ることは当たり前だ。そして見極めることも重要視される。
だからこそ常に気は張っている。テニス部員だけでも、多くを抱え、生徒会ではより多くの生徒をみて覚え、そして行動している。
普通ならオーバーワークだと言われるようなことだ。けれど、将来はもっと大きな世界にはいたいと思うからこそ、自分はその仕事が苦ではない。むしろ今までがうまくいきすぎていたのだろうか。だったらこれがひとつの試練だと考えればいいか。
バシュっと思い切り打ち込んだボールはイレギュラーバウンドをして後ろのフェンスにぶち当たる。
『・・・はぁ・・・』
その音に集中力が切れて、深く、息を吐き出した。もうすぐ、大会だというのに…こんなに気持ちが荒れてしまっていては誰の示しにもならない。
私は、私らしくあればいい・・・だから・・・私は強く、誇り高くなければ。
もう一度、打ち込みを始めようと、ボールを上げた。
「もう、下校時間やで、景ちゃん」
『侑士…。』
「相談もしてくれんとか、めっちゃ冷たいわ」
けれどサーブを打とうとしたラケットはボールをとらえることはなく。放り投げられた黄色は私の足元を転がった。
声の方へと視線を向ければ困ったように笑っている侑士がいる。その横には二つのラケットバックがあって、あぁ随分と待たせてしまっていたんだろうとラケットを下ろしきった。
『大丈夫よ。生徒会のことだから。』
「やけど、朝、呼び出しされてたやん。皆いわんかったけど、心配しとったんやで?」
言葉を返せば、返される
彼に言ったからといって、解決なんかするわけ無い。この私情で、彼のプレーが揺らぐ…ことは無いと思うが…もしもがあったらいけない、
いや、私が弱い部分を見せたくないというのがおおよその理由だ。かってな私情である。
『本当に大丈夫。もう、解決するから』
だからそう言って今度こそしっかり、「いつもの私らしく」笑って、落ちたボールを拾った。
03.青年が歩き出す
(私は気がつかなかった)
(これは悲劇の始まりにしかすぎないなんて)
再q905
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