「跡部・・大丈夫か?」
『え?』
副会長である速水の言葉に、キョトンっとしてしまった。いったい何の話かというのが実際のところである。今現在私は仕事をしているだけなのだが・・机の上にある書類が目に付かないのか・・・それとも、否か・・・
「…榊先生が呼んでた。」
『監督が?あら、そう、ありがとう。』
それからそういわれて、ついでにと完成した書類を手に持ち立ち上がる。
榊監督が・・・一体私に何の用件だろうか。そもそも、部活のことだったら昨日の時点で今日の予定は言われるはずだから速水から言われることはない。
なんて思いながら書類等を机の引き出しにいれていれば「俺はいつでも味方だから」なんて言われた。
突然敵味方、なんて随分と物騒な話をするのねと笑ってしまう。
なのに彼は難しい顔のままだ。
『(期限が過ぎた書類なんて・・・無いはずだし・・・)』
それに、成績も落としていない、・・・母さん達の・・・?いやそれもあまり可能性は無い。
では・・・何故?
知らぬ間に足が早くなる。廊下を進めば生徒からの視線が私に刺さった。なるほど・・・他者は知っていて私は知らないということ、私が気がついていないということなのだろうか。
職員室前について、いつものようにノックをして、『失礼します』とそう言ってから職員室に入る。
教師からの視線も痛い。
つまりは教師陣にも知れていることなのだろうか、生徒会にはなにも入ってきていないのに。
「跡部、こっちだ」
なんて、考えをさまよわせていれば、すぐに榊監督に呼ばれた。視線を向ければ、彼も彼で、表情は暗い。
いつもの通り彼に近づくのだが、やはり回りの視線は痛いままだ。
『監督…?』
「私も一緒に立ち会おう。その書類は…」
『明後日までの提出のものです。』
榊監督も、どこかよそよそしい気がしてしまうのは、私の勘か。
立ち会うとは、一体、何に立ち会うというのか。それほど、私は何かしたということか、頭をフル回転させるが思い当たる節はない。
経費も、今年度の予算振り分けも、なにも問題なかったはずだ。
「校長先生。失礼します。」
榊監督に続いて、職員室のさらに奥にあるその空間に入る。別に入ること事態が珍しいことでもない。赤い絨毯の敷き詰められた校長室に足を踏み入れれば、フワリッとうえてある植木鉢の花の香りが鼻をかすめた。
榊監督のエスコートのままに、なかに入り、後ろで扉がしまれば、部屋のなかには私と校長と榊監督との三人だけになる。
『なんのご用でしょうか?』
沈黙を壊すために最初の一言目を発す。そうすれば校長は私に座るように促した。それにしたがって校長が座るソファーの向かいに座る。
「キミの耳にも届いているだろう。最近氷帝生を中心に暴力事件にあっている件についてだ」
『はい。』
「それに、生徒会がかかわっているとは、本当かね?跡部生徒会長。」
そういわれて、固まった
そうしてすべてを納得してしまうのは、すべてつじつまがあうからだ。
生徒からの視線。教師からの視線。榊監督の態度。そして速水の「味方だから」というあの言葉。
なるほど、と思ってしまったが、だがしかし、心辺りの欠片もないものを真偽されても意味はない。
『私がそんなことをするような人間に、あなたは見えるというんですね。』
築き上げるものはとても長い年月がかかるのに、崩壊するのはほんの一瞬だ。それは自覚している。力なく椅子によりかかれば、ぎぃっと小さく悲鳴を上げる。目を覆うように手を置いて、また、大きくため息をついたのは頭が痛くて仕方がないから。
『なぜ・・・なぜだ・・・』
ぽつりとこぼしてしまったのは些細な弱音だった。机の上に無造作に置かれたたくさんの書類。警告をしめすような、その手紙は、すべて「生徒会を批判するもの」だった。教師から、部活から、生徒から、市内から・・・いろいろなところから出回っているそれが、「会長」という彼女の背にのしかかった。
手をどけて、オレンジ色に染まった天井を見上げる。アイスブルーの瞳に、いつもの威厳はない。頼りなくゆれ、そして目を閉じた。
そこにいるのは、女王としての彼女ではなく、ただの高校生の跡部景だ。
『私が…何をしたって…言うんだ…』
吹奏楽部の音が外から聞こえる。流れてきたメロディーに、景はフッと悲しげにわらった。
『これじゃあ、私が・・・』
流れ聞こえてくる曲は、輪廻曲(ロンド)
『私が、踊らされているみたいじゃないか・・・』
苦しげに吐き出された声に、誰一人として、答えられるものは居ない
02.破滅へのロンド
流れ出した曲は、女王と、そして、ある人に届く
再1904
←
list
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -