あふれ流れるその曲は、女王に何をもたらすのか…
「景ちゃん、なんや、寝不足かいな…」
『…あぁ、少し…』
テニス部の部室。PCを前に、眠ってしまっていたらしい景を起こしたのは忍足であり、彼女を軽くゆすれば、簡単に起きたが、その目のしたにはうっすらと隈が見える。
けれど、景はそう言って、一度微笑むように笑うと、体を起こしPCを閉じた。すでに時間がたっていたためかPCの画面は真っ黒で、スリープモードになっていたため、内容は誰にもみられていない。
そんな確信はあった。
それにしたって集中力がなくなりすぎだと、苦笑いをこぼしてしまうのは、今まであり得なかったことだから。
『心配しないで大丈夫。練習に行くわよ・・・』
ぱたんっととじたPCを鞄に入れ、鞄の鍵をかけるとラケットを片手に持ち、そして、部室をでる。
忍足は一瞬鞄を見たが、厳重にしまわれたその秘密のPCはパンドラの箱だとおもい、彼女を追った。
PCを前に、複雑そうな表情をする男が1人。
見ているのはこの学校に張り巡らせた隠しカメラの映像である。
ある1人の少女に頼られ、そして、警察と連携をし、申請を得た後、校長に許可を取り今まで学校で防犯として設置されていた監視カメラのデータを確認していたのだ。
もとより、警察の申請が出ている以上、誰の文句も出ないだろう。しかし、頼んできたのは元生徒会長であり、いまや、学園の悪者といわれてしまった彼女である。
そこは名を伏せているが警察までのルートをひとつ作ったのは彼女の友好関係からだった。
男・・・榊太郎は、テニス部の顧問であり、生徒会長として頑張る彼女をずっと見ていた。よって、信頼はより多く寄せている。
そして、もし、そんな行動を取るのならば、進路にかかわる今ではなく、ずっとまえ・・・例えば、中学生のころにすでに実行しているだろう。たとえ少女がどれだけ賢くても、親を見て育った以上、己の下に居る生徒達に手を出すとは考えられなかった。
「跡部・・・」
信頼を寄せていた彼女を、これ以上、落とすのは、榊にとって苦痛以外の何者でもない。
早くこの悲劇を終わらせなければ、と
そう思って行動をするのは何より彼女の努力と本質とそして弱さを知っているからだ。
09. 天才指揮者は語る。
彼女の独奏(ソロ)なくしてこの音楽は完成しないと
再1904
←
list
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -