ロンドと共に、流れ出したそのメロディー
規則正しいそのテンポを、女王はただ目を閉じて聞いていた。
思い出深いその曲に、何を彼女が思ったのかは誰もわからない。
けれど彼女は気がつき始めている。
この世界を憎み、己を憎む、その影を…
「ああ、今からこれるか ?」
そして、この曲は彼女に何をもたらすのか…騎士も女王自身も…
まだ気がついていない
そして、世界を終演へ
『お願いしても、いいですか?』
とある一室。そこに居たのは景と榊の二人である。彼女の手には茶封筒があり、それを差し出せば榊も榊で受け取った。その封筒の中身を知るのは、まだ、ただ1人。
「…あぁ、私も、お前の事は信じていたい。」
『監督、…私の信用が薄いばかりに、監督にまでご迷惑をおかけしてしまって、すいません。』
「いや、大丈夫だ。お前は無実だと信じている。」
そして、そう言って、景は綺麗に頭を下げた。銀色の長い髪が、さらりっと肩から流れ落ちる。彼女の視界の端でゆれる。「頭を上げなさい。」と肩に手を置かれてそして、顔を上げられる。しかし彼女の視線は下がったまま。もう一度彼女のなを呼べばゆっくりと顔があげられ伏せていたアイスブルーの瞳を、ゆっくりと開いた
『監督…』
「私も、出来る限りのことはしよう。 だが、チャンスを生かすのは自分だ。」
『はい。』
それは、一種の賭けだった。
彼女のすべてを賭けた、願いにもとれたものだった。誰にも話せない、けれど誰かの協力を得なければなし得ない、そのときに選んだのは、彼だった。
『監督、もしも、この事件が最悪な形で終わったら。そのときは…』
「…お前の好きにすればいい。」
『はい。』
そうこれはひとつの契約だと、景は再び、瞳を伏せて、そして榊から一歩後ろへ下がると、軽く会釈をし、そして、音楽準備室を後にした。
封筒の中には、地図があった。
犯罪まがいなことだと、気がついていたが、それでも、彼女は実行しようと、いまだ、自分を信じてくれている榊に、協力を頼んだのだ。
08.テンポを刻んで
彼女は再び、壊れた世界の製作に入りました
再1904
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