消えたヒト
結局、あの一球いこう、特になにもなかったからついでに私も消えさせてもらった。
情報をあつめた結果、どうやら、あの中学生達は日本からの代表選手らしい。比較的怪我人は少なかったらしくそれはホッとしたが、問題はこれから。
一際めだつカラフルなジャージの軍団を見つける。黄色と、白が中心だが、どうやらもめてるらしい。
「警察なんかに任せておけるか俺が見つけ出して、叩き潰してやる!」
近づいて行くが、どうやら気付いていない。青と白のジャージを着た緑のバンダナをつけた少年が声を上げたのに、思わず手を鳴らした。それに、視線が俺に集る。
『So Beautiful 仲間の敵討ち?勇ましいのは結構だが、相手はお前たちが太刀打ちできるような奴等じゃない。ひっこんでて』
ガタリ、と・・・黄色と緑のジャージを着た奴等が立ち上がる。方言?だっけか、それを持ってるっぽいが、関係ない。
『大会に備えて大人しく練習してろって言ってんだよ。』
「・・・あ」
忠告してやってんの。こっちはね、
片足重心で左手を腰に当てていってやれば、昨日助けたあの帽子の少年がはっとしたように俺を見た。だが、それよりもさきにバンダナが俺のことを睨む。
「ッテメェか、桃城に打ち込みやがったのは!!」
「先輩!違うっすよ…この人…夕べ俺のことを助けてくれた人っす」
「…たすけた?」
そして殴ろうとしたのか、俺の元へ踏み込んできたそのバンダナ君を止めたのはその少年で、それから信じられないというように俺を見た。失礼だな。
『そのしょーねんには、おせっかいだったみたいだけどな。おせっかいついでに、もう一度忠告する。奴等にはかかわるな。』
最後の忠告。シンッとなる、日本代表の諸君。
だが「そうはいかねぇ」と俺に反抗したのは、いわずもがなそれはバンダナ君だった。
「こっちはケンカを売られてんだ。」
『口で言ってもわかってもらえないみたいだね』
あぁ、昔の自分を見てるようだ… なんて…
今にも殴りかかってきそうなバンダナ君に「止めろ海堂!」と止めにかかったのはおそらく先輩だろう。それに思わず噴出してしまったが
『血の気の多い奴だな、なぁそいつを貸してもらっても?』
ちらりとバンダナ君と同じジャージを着ている茶髪の青年に視線を向ければきょとんとしたように「ラケットを?」と俺に聞いた
「っテメェ、ナメてんのか!!」
『勝ってからいってね?とりあえず近くにコートがあるそこに移動しましょ。プレイヤーはプレイヤーらしく、ね?』
移動したのは、なんどもあいつと打ち合いをしたテニスコートだった。
パーカーを脱ぎ、ベンチにかけた。それからラケットを構えて姿勢を低くする。
『俺を倒せないようじゃ、アイツらに辿り着くことなんて出来ないぜ』
「その減らず口今すぐふさいでやる」
それからそういえば、バンダナ君はバウンドさせていたボールをとり、そしてトスを上げて打ち込んできた。普通にリターンし、そして再び返ってくるボール。
そっと左手に気を集めて、そして、同時に打ち込む。
わかりやすいコースに打った。だから簡単に打ち返されてしまうが・・・だが、そうはいかない。
「うまい!宍戸並のライジングショットだ!」
「決まりですね。」
外野がなにかいっているが、あまり気にはしない。もう決まりだ。
一瞬遅れて返されるそして、タイミングのずれたそれはコート外へとでた。
つまり、アウト
驚いたように俺を見るバンダナ君とざわざわしている外野。
次は俺からのサーブ、いつものように打てば、振り上げるようなフォームで返された。
「でた、ブーメランスネーク!」
たしかに、ポールの外を回りこちらがわに入ってくるのはさすが、けれど、返せないわけがない。くっと、手元で空気を掴み、そして打ち返す。
平然とそれは戻ってくるが、もちろん、先ほどと同じようにそれは俺の頭上をとおり、コート外へと落ちた。
唖然とするバンダナ君に微笑みかけた。
3つ・・・4つ・・・5つ・・・。
返球されたボールはすべてアウトゾーンへとおちる。
『ジェミニ。』
小さく呟いた。そう、ジェミニ。
通称双子打法というものだ。
ドサリ、とコートに崩れ落ちたバンダナ君が叫びをあげた。仲間がそんなに大切なのか・・・それは人のこと言えないが。
「ふぅん、ジェミニね・・・ ねぇ、次は俺ともやろうよ、おねーさん。」
ふわりと、コートに降りて来た少年。あぁ、次はお前か、なんて。
心の中でため息を付いた。
くるりと、少年の手元でラケットが回る。
あれだけでジェミニの対処法がわかるなんて、面白い。
そう・・・こんなに楽しい試合は久々で小さく呼吸が乱れる。
「行くよ。」
けれど少年がボールをトスした瞬間、
その影に幻が重なって、動けなくなってしまった。
消えた人
《俺の名前は林シウ。 お前、名前は?》
(越前リョーマだけど・・・)
《ふふ、あいつ等が目を付けるのもよく分かる。》
そう、あいつ等は・・・
そういう奴等を狙っているんだから
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