05

精市君に結局送られて帰ったあの日。

その日から3日がたち、完全に熱が下がったので学校に復帰することが許された。
母さんにとても怒られてしまいましたよ。
精市君にお願いしてお見舞いには来ないように言ったのに初日に雅治君はきました。マスクをしたままあえて精市君譲りの毒舌をかましていれば彼は1時間後に帰りましたが、少しションモリしていたその後ろ姿が犬のようで、なんて。

そのあと精市君に報告しましたよ。
まぁ、完治したので学校に来て、自分の目を疑うことになってしまった。

…これは…どういうことなんですか…


『何故…貴方がここにいるんですか…』


部室の中。見慣れない茶髪。思わず言葉を漏らした。


「…やぎゅ…さん」


そこには先日会った弦一郎君の親戚、棗魅春さんの姿があった。
彼女の格好は学校指定のジャージであり、手に持っているのは私がいつも用意しているボトル。

ふわりと背筋に嫌な予感が走って、部室を飛び出した。

探すのは藍色。簡単に見つかる彼は私の姿を見ると、私から視線をそらして私が言いたいことが理解できるようで…


「彼女にマネージャーになってもらうことにした」


そう、たった一言言葉をもらした。


『…今なんと…』


固まってしまうのは正直仕方がないのかもしれない。信じられない言葉を聞いて、思わず聞き返した。

この少しはやめの時間にいるのは四天王と呼ばれている私たちぐらいで、精市君に話しかけていた私が気になったのか蓮二君や弦一郎君も私たちのところへ来ていた。


「秘歌理、大丈夫か?」
『あいにく私はいたって正常です。』


蓮二君の言葉に、返す。
それから視線を向けるのは弦一郎君だ。


『私のことが信じられませんか、弦一郎君。』


事の発端は貴方の親戚だ。
おそらく、彼女をマネージャーにしたのは彼の提案だろう。

もともとマネージャーをとらないと決めたのは、弦一郎君が発端だったはずだ。
それは私のこともあるし、一時期いろいろな事件があったからでもある。

それをしっていて、彼は彼女をマネージャーにした。


『確かに、私は昨日まで体調を崩し、休んでいました。けれど私は自分の仕事に責任を持っています、』
「だが、お前もレギュラーで」
『今までの私はなんですか?レギュラーと言えど、この仕事をこなし、そしてそのままキープを続けてきました。貴方達と同じように四天王と呼ばれている私を、貴方は信用できないというのですね。』


とまらない。
蓮二君と精市君は私の豹変振りに驚いているようだ。私だってこんなに口が早く動くなんて思いもしなかった。

確かに、彼女は天涯孤独の見だ、けれどそれを特別視してはいけないのは目に見えている。


「秘歌理」


そんな時、私を呼ぶ低い声
眼鏡越しに睨めば機嫌を悪くしているであろう弦一郎君と目があった。


「魅春を推薦した俺を信用できんというのか」


そして低いトーンの声で言われれば少し、恐怖を覚える

けれど私はそのまま彼を睨み続けた。何年も彼と過ごしてきた。何年も彼の怒る姿を目にしてきた。
そんな私が今さら彼のそんな声に他の生徒より恐怖を抱くことはない。静かに口を開く


『お言葉ですがたった数日しかあっていない新たな仲間を信用しろ、という方が無理な話だと思います。確かに新しい仲間が増えることはいいことです、みんなのモチベーションも上がることでしょう。けれど、その新しい仲間を特別視しているようでは王者立海の名はまた奪還されます

貴方は前に言いましたよね。負けることは許されないと。そのための行動ならば、私は文句は言いません。…失礼しました、私は練習に行かせていただきます』


今月はミクスドが有る。こんなことをしている場合ではない。


「秘歌理」
『はい?』


ラケットを握ろうとした私に「話がある」と蓮二君は静かに言って…
それにはっとした精市君の表情と、ムスッとしている弦一郎君の表情が見えた




*Side Yanagi

あの日。
秘歌理が精市に病院へと強制連行された日。
世界が180度めぐり、変わった気がした。


「…これは…」


どういうことだ…。次の日、秘歌理は高熱のため学校を欠席したそれはまだ納得がいく。しかし、目の前のこの光景はなんだ。

弦一郎が昨日から親戚を学校に連れてきていることは全員知っていた。だが、その本人を前にして違和感を覚えたのは俺だけではないと思ったが。


「どうしたんじゃ、参謀」


秘歌理以外の女に心を開いているお前がいて、驚いた。いつも、秘歌理にしていることを、なぜ、その女にする。


「仁王ばっかりずるいぜぃ!」


そう言って丸井も棗に引っ付く。
それを見て弦一郎はマユをよせ、ジャッカルは苦笑い。逆に精市は、本当に驚いた表情をして、その表情に精市も正常であることはわかった。


「に、仁王。今日は秘歌理が休みだから蓮二とダブルスの練習をしてね。」


精市が戸惑いつつ言う。
それに、ムッとする仁王が吐きだした言葉は天地がひっくり返るのではないかと思うようなことだ


「なんでじゃ?俺はミクスドは魅春とでるけぇ、魅春と練習するぜよ。」


俺も、精市も、本気で驚いた。今まで、秘歌理意外とダブルスを組むことを本気で嫌がっていた仁王が…だと…


「あー!仁王ずりぃ!仁王は秘歌理とペアだろぃ!」
「「柳生」はただのダブルスパートナーじゃ、別に俺が誰と組もうと関係ないと思うがのぉ」


あっけに取られる。
「柳生」・・・?お前は「秘歌理」と読んでいただろう?
「ただのダブルスパートナー」?「シンクロ」するほどにお互いを思いあっているおまえらがか?


「そうか、お前にとって秘歌理はただのダブルスパートナーか」
「そうじゃ、とにかく今は魅春とおるんじゃ、柳生の話はせんでくれんかのぉ」


あぁ、本当に見損なったぞ、仁王。

蓮二君!この本、本当に面白かったです。ありがとうございました

記憶の中で、本を秘歌理が俺に笑っている。あぁ、俺にとっては好都合だ。いままで秘歌理とお前はお互いを思いあっていたから身を引いていたが


「仁王」
「なんじゃ?」
「手放したことを後悔するんだな」


いつも以上に声のトーンを落とし、そう言った。仁王は俺の言葉にきょとんとしたが、俺は精市を見る


「精市、今回のミクスドのダブルスだが」
「え」
「仁王と棗、」


お前は自ら大切なものを捨てた。後悔し尽くせばいい。あいつを幸せに出来る権利を、お前は手放したのだから。


「俺と、秘歌理ではだめだろうか」


口角があがる。きっとお前は悲しむだろう。
俺では物足りないだろう。けれど…ほしいものを手に入れたい、そう思うのは俺の勝手だ。



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