02


『は…は…』
「ふ…なかなかやるようになったな」


呼吸が乱れ、足元がおぼつかなくなりラケットを片手にその場にへたり込んだ。もうやだ、帰りたい。なきそうだ

始まった試合。現在のスコアは「7−6」 タイブレークはいくつだっただろうか。

結果は、


「これで、お前に任せることが出来る。」
『…は…はぁ…』


さすがに、どれだけ体力に自信があっても、雪のせいで足場が悪く、何度転んだことか、それでも勝ったことをほめてほしい。
身体はもう限界だった、けれどヒョイッと私を軽々持ち上げた徳川さんにぎょっとする。

彼は疲れるということを知らないのか、と思ったが、抱き上げられていることにより、心音が伝わってくる。それに、彼も私も汗だくだった
淑女として汗だく、というのはどういうことだと思いますが・・・


「すまない、無理をさせてしまったな」
『いえ、大丈夫です・・・』


--ありがとうございました。楽しかったです


そういえば、彼は微笑んだ。が、同時に私の意識はだんだんと遠のいていく。
だんだんと白んでいく意識に逆らわず、身を任せれば簡単に意識がとんだ






フワフワと雪が舞うそこに私は一人、取り残されていた。
たった、「独り」。

真っ白な雪のがずっとずっと降り続ける、
しゃく、っと立ち上がればズッと降り続いていた柔らかな雪が音を立てた、

パンパンッ

ジャージについた雪を払う、「芥子色」のジャージに白は目立っていた。


「秘歌理、」
『え』


ふわり、何かが私を抱きしめた。同じ、「芥子色」大好きだった「銀」


『…は、…雅治君…?』


かすれた声しか出なかった、
でも、彼の腕は震えていた。


どうして…


「・・・ん・・・すまんっ」


ズルリ、体が雪の中に沈んだ。眼鏡がないのに、はっきり見えた、


「すまんっすまんっ」


座り込んでいる私の肩に、いつの間にか正面に居た仁王君が、首をうずめて居た。柔らかい、彼の髪質が頬をくすぐる。


「すまんっすまん、」
『・・・』
「じゃから・・・っ」


一瞬、彼と視線が合った、
けれど、


「_____っ」


声は、聞こえなかった




「おきたか、」


白い世界とは一点、今度は、はっきりと見覚えのある場所だった。
合宿所内の私の部屋。外の世界が遮られるように露結して、曇っている。
ここは、暖かい。


「随分と眠っていたな、大丈夫か」
『・・・はい、すいません、』
「いや、いい、無理をさせたのは俺だ」


身体を起こせば目に見えたのはジャージ。
その首元には、「No.1」と「No.2]のバッジが光っていた。
ぎょっとして目を見開けば、両手にマグカップを持っている徳川さんは私に片方を差し出した。慌てて受け取れば、暖かく甘い香りが香る。


「俺はもうここをでるからな、ちょうどバッジの引継ぎをしなければならなかった。が、越前はまだ中2、来ることもなかったからな」
『…ですから…私…ですが、何故』


二つのバッチが・・・
そう聞けば徳川さんは「時期にわかる。」とそう言った。
時期に、というのは多分、次の高校一年生のことだろうか、と思ったけれど、違うらしい。


「U−17を頼んだぞ、」
『え、あ、はい。私でよければ』
「ふ、その前に合宿があるがな、」
『!? 去年のですか』
「あぁ、二軍倒し、がんばれよ」


そして・・・


私はここに君臨する。
立海、淑女・柳生秘歌理ではなく


U-17 NO.1 柳生秘歌理として



けれど、あの夢は・・・一体・・・




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