06


まるで嵐が突然来たみたいだと、形容した自分は悪くない。
ちらほらと並盛の街中に黒服の怪しい集団がうろうろしているのを見て、エマは舌打ちをした。
帰り道、校門のところで黄色い歓声を浴びている金色のイタリア男を見つけて裏門までガンダッシュしてしまった。
だがしかしそううまくもいかない。


『(あー、くっそ、へなちょこのくせに)』


会ったことはないはずだ。
実際、エマが彼の姿がわかった理由は彼を写真見たことがあるから。
それ以外に接点があるとしたら、何度か手紙のやり取りをしたぐらいに思う。
なかば9代目ファミリーの目をごまかすためではあったのだが、「いつか会いたいな」と手紙にかかれた時点でエマは手紙を返すのをやめた。
このイタリア男め、とイラッとしてしまったのが原因だ。

だが、伊達に隠密は得意である。
なんなく自分の居住地であるアパートにたどり着きオートロックの末部屋に滑り込んだ。

そう滑り込んだはよかった。


「動くな」


まっすぐ向けられた銃口に完全に動きが止まった。息すら止めてしまったのは反射。
目の前にいるのは、金色。


『跳ね馬ディーノ…』
「よっやっと会えたな、エマ」


そのなを言えば、にっと太陽のような笑顔を私に向けて銃を下ろした。正直言えばなぜここのいるのかが一番の疑問である。
私の考えに間違いは一切ないはずだ。学校の情報以外でここにすんでいるのを知っているのは学校ぐらい。
いや、リボーンが侵入できるぐらいのセキュリティだ、情報が漏れたところで疑問はないのだが、鍵はどうしたと突っ込みたい。


『はい。はじめまして、ドン・キャバッローネ。お目にかかれまして光栄です。』
「ははっそんな固くなるなって!俺のことは学校の先輩って思ってくれりゃぁいいだろ?」
『その節は兄がお世話になってました。』


ちなみにこれは玄関先での光景である。
いい加減家のなかにいれてほしい。いや、ここは私の家なのにどうしてこんな仕打ちを受けなければいけないのだろうか。悲しい。
すっかりきっかり忘れていたのだが彼は兄さんと同じ学年だった。


『とりあえずお茶でも飲んでいきますか?』
「おっいいのか!」
『すでに家のなかにいる人にこんなこという体験もなかなかないのでさっさと奥に入ってください。』


ちょっとだけ雑になったのは許してほしい。「悪いなぁ」なんてにこにこしながらリビングに戻っていったその姿に脱力した。
そこまで広くはない部屋だが一応1LDKである。せめて制服から着替えたい。制服のまま何かしたくない。スカートは嫌いだ。




*Side Dino

--お前スクアーロの妹には会ったことあるか?

リボーンに言われた言葉に突然なんのことだって思った。
学生時代の一応の同級生であったスクアーロとはあれ以来あっていないが、あの例の事件の中心人物と聞いて戦慄した記憶はある。
もう7年も前の話ではあるのだが。

そしてその時にはじめてあいつに妹がいることを知ったのだ。あいつと年が近いって事もあって9代目から写真を渡されたときは似ても似つかないその容姿にちょっとだけびびった。きっとスクアーロに言ったら殺されかねない。

写真のなかにいたのは本当に年端もいかない女の子だったのだ。
7年前といったら彼女はまだ6才。スクアーロと同じ色の髪は前はきれいに切り揃えられ長さはセミロングですこし毛先がふわふわとしていて、格好は女の子が好きそうな真っ白なふわふわとしたドレス。なのに薄い水色の瞳が心底寂しそうに窓の外を見つめていた。
一瞬、本物かどうかすら見分けがつかなかったが、彼女に手紙を送ってみれば返事がかえってきて実在していることに驚いた。

それから何度か手紙のやりとりをして俺からいつかあえたらいいなと送ってから返事は来なくなった。
ボンゴレのパーティとかでも探しては見たが、彼女の姿はなく。
かれこれそんなで月日は流れて今日。はじめてその実物を見た。

悲しいかな、似てはいけないところが兄に似てしまったというのか、写真で見ていたあの大きな目は鋭さをまし、ふわふわとしていたあの髪はまっすぐできっちりとしていた。


『で、私になにかご用でした?』


手紙を交わしていたときよりも少々きつい性格だと思ったが、そこは年月で彼女も成長したからだろう。
ただでさえ裏社会で生きていくのに柔らかさは命取りになる。それも、謀反者の妹となれば周りからの扱いもひどかっただろう。彼女に罪はかけらもないというのに。


「いや、俺がただ単にあってみたかっただけなんだが、それじゃ理由にならないか?」
『イタリアーノが未成年の淑女の家に無断侵入ですか。驚きです。』
「そういってくれるなって。勝手にはいったのは謝るよ。」


ムスっとしたまま、俺にもいれてくれたコーヒーに口をつける。先ほどの制服姿も似合っていたが、今は高い位置に髪を団子で結い上げて、ワイシャツに水色のリボンを蝶々結びに黒のカーディガンと下は黒のスラッとしたブーツカットパンツ。ジャパニーズ女子のなかでは長身に当たる彼女のスタイルのよさがいやでもわかる。


『あってみて、幻滅しましたか?私もドン・キャバッローネの写真を拝見させていただかせていただいてましたから』
「俺が見たのはお前のちっさい頃の写真だけだったから、きれいなお嬢さんだなって思ってな。」
『お世辞でもありがとうございます』


写真で見ていたよりもずっと大人びた。
少女というよりは女性というにふさわしい風貌でジャポネーゼの男にとっては高嶺の花で手なんて出せないだろう。

手を伸ばしてあきれたように目を伏せているエマの頬にすべらせる。その行動に伏せた瞼が、吸い込まれるような水晶のような美しい瞳が俺を写した。


「本当にきれいだな。持って帰りてぇ」
『この国では未成年に手を出すことは犯罪です。』
「お前のお目にかかるやつがいなかったら俺がもらうよ。」
『私の理想の男性は優しくて格好いい、兄さんよりも強いヒト。できれば剣士。あなたは剣を使わない時点で論外。』
「ははっ手厳しいな」


俺はどうやら一度にやっかいな弟分と妹分をもったらしい。
今回はまだまだ未熟な弟分には会えないが、次に会う時の楽しみにしようと思う。


190125


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