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 でも、だからってこれは違うだろう。


「よっ!妹分!」
『…お帰り願っていいでしょうか?』
「そう冷たいこというなよ!」


家に帰って再び目の前に金色が現れるとは思うまい。
彼にあったのは夏休み前だったと記憶して、今は12月頭だ。一体何をどうしたのか。もうすぐウィンターバケーションだというのに…面倒ごとを持ってこないでほしい。

部屋の奥の方から「本当にすいません」と彼の部下であるロマーリオさんが顔を出しているが、本当にラッキーなのは初めて侵入された時以来自分の寝室だけには絶対に鍵をかけてリビングをほぼほぼ客間仕様にしていたことだと思う。
家探しなんてされないだろうが、入っていい場所と入られてほしくない場所がある。


「実はさ、折り入って手伝ってほしいことがあるんだ。」
『お断りします。』
「あのツナとあの二人もついてくるぞ」
『行きます。』
「それでいいのか嬢ちゃん」
『その他二人はどうでもいいですが武君に危害をもたらすのは私が遠くから守るって決めたので。』


私は武君を絶対にこっちの世界に入れないと決めたのだ。


「んじゃ、また日程は伝えるな!」





そうして呼び出されたのはそれから約2週間後。
ロマーリオさんが迎えに来てくれたのだが、そのまま案内されたのは深い山のふもと。
ちょっと理解が追いつくまでだいぶ時間がかかったんだが…?


「あり、エマ?」
「なんで暴走女が一緒にいんだよ」
「前にツナを入院させちまったわびに払はらわって話し合う場をつくってやろーと思ってな。 こーゆーところで寝食をともにするとファミリーの結束は深まるんだぜ」
『私ファミリーじゃないんだけど?』
「おう、そうだ。こいつは外野だ。 それより10代目はどこだ、本当にいるだろうな!」
「そう怒んなって。 この先だ。ロマーリオここまででいいぜ。」


元々手伝いと言われていたこともあって何かするかとおもったけれど、肝心のリボーンと沢田は居ないし、まさかの誘ってきた本人が遅れてきた。
でも、跳ね馬よりもさきに武君が私に気が付いて、そうして機嫌が悪そうに私を「暴走女」と言った獄寺には中指立てておく。
その私の手をすぐに下げたのはロマーリオさんだったし、なだめたのは跳ね馬だったが、続けていったのはその言葉。否定したしされた。そしてロマーリオは帰さないでほしい。


「それにしても、エマもディーノさんの知り合いだったんだな。」
『うん。武君も知り合いだったなんて思わなかった。』

「けっよくいうぜ」
「なんだ、拗ねてんのか?」
「拗ねてねーっての!!」


結局ロマーリオさんは帰ってしまって、一番の心配要素だけが残りつつ山の中を進んでいく。
道案内をする跳ね馬とそれに続く獄寺。後方は私と武君という形なのだけれど、随分と不安定なつり橋を渡った先が目的地なのか。

高所恐怖症というわけではないからいいのだけれど、それでも老朽化が激しすぎてどうしようもないと思うのよ。ギシギシいってるし…。
そこを渡りきってからはだんだんと滝の音が近づいてくるし。



「…あぁいう弟分の姿を見ると昔のいやーな記憶を思い出すぜ。」
『同感。』
「むちゃくちゃだよなぁ、相変わらず。」


獄寺と武君が沢田を助け出しに行く姿を見て、心底げんなりつぶやいた跳ね馬に同調するのは、いやでもその気持ちがわかるから。
彼の家庭教師をしていた時はどんなものだか私にはさっぱりわからないが、死ぬ気弾といい、ボンゴレの中でさえ結講ヤバめな修業をしている記憶があるが外で手加減しているとも思えない。

実際、私だってばれないように裏側から修行の手筈を整えられていたのだから。


「山こもって話し合いなんてくそつまんねーからな。 オレはあそぶことにしたんだ」
「っ人をつかって遊ぶなー!!!」
「じゃあ久々にお前と遊ぶか」
『…は?』


リボーンが突然こっちに飛んできた。
お前と言ったか…? 思わず飛んできた体をひょいっとそのまま跳ね馬に飛ばせばそのまま彼の肩に乗っかった。


「なんだ遊ばねぇのか? じゃあエンツィオで遊ぶぞ。」
「あ”!?いつの間に!!!」


「ポーイ」なんてかわいく言ったって許されない。
ぽちゃんっと良い音がしてそれが川に落された。
…エンツィオって、跳ね馬のペットの亀…?すっぽん…?だったよね。


「エンツィオを川ん中なんかに入れたら!!」
『…何があるの』
「あぁああああ、エマさん知らないし!!」
「逃げろ! エマ!!」


何が、と思った瞬間にザッバァ!!!と勢いよく巨大な亀が現れる。
…うわ、と思ってしまったが、もしかしてレオンに似た…なにか…なのだろうか。


「ありゃなんだ?!」
「山の主だ!!! 山の主の怒りだ!!! 静まりたまえ!!!」
「あのでかさじゃ手がつけられねー! 橋の向こうに走るぞ!!」


一番に武君に手を引かれた。
そのまま走りだした武君の背を追って走り出す。後ろから沢田や跳ね馬が追いかけてくるが、渡ったばかりの吊り橋を戻る。
だが、後ろから追いかけてくる巨大化したエンツィオが追いかけてくるのもあって、大きく吊り橋がゆれてしまって、進み辛い。盛大に舌打。

後ろから沢田の情けない悲鳴が聞こえるが、そんなことも気にしてられない。


「ここはオレが時間かせぎをする。 お前たちは先にいけ!!」
「待て! おまえのヘナチョコムチじゃムリだ!!」
「つべこべ言わずオレにまかせとけ!!」


その言葉ほど信じられないものがない。
実際そうだった。空気を裂く音が聞こえたかと思ったら何かが切れる音がした。



20210804


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