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 この間お店のお手伝いをしたからか、その流れで、たまにお店を手伝うようになれば、夕飯も食べさせてもらえるし一石二鳥。
さすがに中学生でバイトとして雇うのは日本の法律上NGだから、お給料は発生しないがその代わりにと武君のお父さんから浴衣をプレゼントしてもらった。

さすがに最初は一人で着れなかったから、お客さんの中で着付けができる人を紹介してもらって、初めて着た浴衣は歩き方に気を付けなくてはいけないなと思ってしまう。
大股で歩くこともできないし、たすき掛けというのをしないと袖がひらひらしていてちょっと不安。

今年はいろいろとやることが多くて京子から誘われていた夏祭りも断ってしまっていたから、こうして着る機会ができたのはとてもうれしかった。


 そうして、落ち着いてきたころに次は体育祭。
何をするものなのかと思えば、いつもの体育の延長戦らしい。でもこれ運動できない人たちにとっては苦痛の何物でもないよねとおもってしまった私は悪くないと思う。
まぁ、別に苦手じゃないんだけど。

この学校では特に「棒倒し」という男子だけが参加することのできる競技が特に白熱するのだとか。
私は普通に100mと障害物競争にしか出ず、後は日傘の下でのんびりさせてもらった。
ものの見事に沢田達グループは大いに目立ち、雲雀まで引っ張り出してくるのはすごいと思うけれど、でも結局「相性」。自滅した末に、ぼこぼこにされてしまって一年生としては悪目立ちした体育祭となった。

10月に入ってからは武君のお父さんが泣きながら「嬢ちゃん助けてくれぇ」って電話がかかってきたし、慌てて竹寿司に行けば阿鼻叫喚。
何これって固まっているうちに事件の内容を知り、頭がくらっとした。

その後、沢田が手伝いに入る日は都合が付く限り私がサポートに入るというよくわからない現象が起こり、私と武君と沢田という組み合わせが竹寿司でよく見られるようになる。


「お、おわったーーー!!!」
『よかったね、武君のお父さんが太っ腹で。顧客の信用、思い出の品、治療費。全部合わせたら普通30万分じゃきかないわ。』
「うぐ!!!」
『それに武君のお手伝い料も合わせてこんなに早く切り上げてくれてるし、賄だってもらってる。 本当に図々しい』
「んだとこのアマ…!!!」
『そうそうに借金増やしてリタイアした奴に発言権はなくてよ。』
「ぐぅうう!!!!」


売り上げにせめてと獄寺は通っていたが、ここの店の品は高い。
そりゃそうだ。一流のお寿司屋さんだもの。
それでも最後の日にはと懸命にバイトというなのカツアゲをしていたらしいが、今後どうなるか。本当にばかな犬。


「エマもいろいろ助けてくれてありがとな!」
『武君のお役に立てるならなんだってするわ! おじさまにもたくさん頂き物しちゃったもの!』
「浴衣一人で着れるようになったもんな。本当すごいぜ! 新しい看板娘ができたって店も盛り上がったし!」
『か、看板娘…』


でも、武君と一緒の時間を過ごせるのは本当にうれしかった。それにお客さんからもいろいろとお話しできたし、表社会の、いい経験になったというべきか。
今だけの楽しみとして、私なりに取っておきたい思い出になったから、まぁ私的には結果オーライだ。



たとえ、この数日後にまた沢田家から「女の子の服買ってきて!!!」と電話をもらうとは思わなかったが。


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