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*Side Yamamoto

朝からちょっと空気が思いなぁって感じてはいたんだが、放課後になってそれが爆発した。
もともと機嫌が悪かったらしいエマが朝一番に『おはよう武君、今日ちょっとテンション高めだから口悪いけど気にしないでね』と満面の笑みでいっていてちょっとだ興味があったっていうのもある。
それにツナも慌ててたから、
でもこの間体調崩したばっかだし、大丈夫かと心配はしてたんだ。

放課後になって一番に動いたのは獄寺だった。
乱雑に椅子をしまうと、その足は真っ直ぐエマのもとへいっていて。エマもにっこりと笑いながら、席をたつ。
だが、笑顔とは裏腹にエマの回りはそれこそ殺気だっていて、いつものエマっぽくない。


「あぁぁああどうしよう!!とうとう放課後になっちゃたよ!!」
「うん?どうしたんだツナ」
「や、山本!!エマさんのこととめてよ!このままじゃ獄寺くんと喧嘩になっちゃう!」


顔真っ青にしてそういって慌てるツナに、何度かまばたきしてしまった。
獄寺とエマが喧嘩?あいつらいつのまにそんなに仲悪くなってたんだ?と首をかしげる。エマはもともと誰とでも馴れ合うっていうよりか、一定の位置を保つようなやつだから、そこが不思議だ。
かくいう獄寺もだが。


「ま、危なくなったらとめりゃいいだろ?俺たちもいこうぜツナ!」
「や、やまもとぉ!!」




ってそんなこんなで二人がいたのは川原。
イライラしている獄寺と、長い髪にリボンを結び直しているエマ。獄寺の武器は知ってる。いつもの花火だ、
エマはなに使うんだ?って思ったら背に背負っていた長いそれを袋から出して、ぐっと力を込めて曲げた。


「弓?!」
「へぇ!すっげぇ!」


エマの髪の色と同じ銀色の弓。
腰に矢の大量に入った筒を下げて、静かに獄寺に向き直った。


「泣いたって許してやんねぇぞ」
『あんたの武器じゃ私に勝てないって、わかんないのかなぁ。あぁ、わかんないか犬だから』
「そういえんのは今だけだ!!」


しゅしゅしゅって一気に火がついた花火がエマに向かって投げられる。
緩い軌道を描くそれはまっすぐエマの頭上へと飛ばされ落下していく。けれどエマは動かない。


動かないが、導火線間近になって、一気にエマが動いた。
地面を蹴って駆け出す。そのスピードの加速の仕方は女子のなかじゃ滅多見ないほど早い。獲物に向かってまっすぐつっこんでいき、くるっと手元で弓を回して、獄寺に殴りかかる。それはあっさりかわされたが、弓の先を地面につきさしてエマ自身は空中で体制を整えて、着地。そのまま地面に弓がささった状態で、地面に膝をついて数本矢を放った。
矢と花火では花火の方が距離が近くなくては難しいんだろう、
エマの放った矢がささったその場所を越えて、舌打ちをした獄寺が先程よりも量の多い花火をほうり投げる。一回目より広範囲に広がったそのその花火に、ツナが顔を真っ青にしていたが、俺は何となく大丈夫なんじゃないかって思った。
先程と変わらずエマは走りながら矢を3本弓にかけてまっすぐ獄寺に向かわせる。
スタートしたときとは真逆の位置。


「ノーコンかよ!」
『目先だけでとらわれるからそんなことがいえるんだよ。』


横一線に地面に刺さった矢にも導火線。舌打ちをした獄寺が動き出す前にその導火線がつきて、白い煙が一気に吹き上がる。風下は獄寺の方だ。一気に煙にまみれた獄寺の姿は見えないが獄寺がぶちまけた花火はエマが弓で自分に降りかかって危なさそうな位置のものだけ吹き飛ばしていた。
つづけて煙の外で静かに次の矢を準備している。
スタン、スタンっと、その矢は静かに煙の範囲外に突き刺さった。さっきの導火線同様にその矢には大きめの布。さっき放ったときもピューって風切り音が聞こえたからきっと獄寺にも聞こえてる。


「この勝負エマの圧勝だな。」
「り、リボーン!!」
「残念だがもうすでにエマはいくつもトラップを仕掛けてやがる。あの煙幕にまかれた時点で獄寺アウトだ。」


どういうことだ?と思う前に、エマが先程弓を地面に刺したところにいた。そのまま、地面からなにかを引っ張り出せば煙の奥で「うぉ!?」っと獄寺の声。
煙幕も切れて、だんだんと晴れていくその場所には獄寺の右足に、エマの放った矢が「まとわり」ついていた。


「えぇぇぇええ!?なにあれどうなってんの!?」
「あやとりとおんなじだな。」
「そんなの、あの弓でやったの?!?!エマさん意味わかんねぇ!!」


純粋にすげぇなって思った。
小僧のいう「あやとり」ってのは指と指で毛糸をあんで図をつくるちっせぇ頃によくあるあれ。
つまり矢は指で、そこに糸が巻かれていたということで、最後にひっぱったなにかがその引き金だった。
それをあいつは花火やらが降ってくるなかで瞬時に見極めていた。ってことなんだなって思うとすげぇなって思う。


「ちっとは腕をあげたな、エマ」
「ホント、すげぇよ!」
『死にたくなかったもの、…え?』


小僧の言葉に、俺もエマに声をかけた。
けれどエマが俺を見て、心底驚いて、そして泣きそうな顔をする。この間みたいな、弱りきったかおじゃなくて、まるで子供が親からしかられるようなへにゃって顔。


『な、んで、たけしく、いまの、みて』
「おう!エマつえぇのな!」
『っ!!』


からんっと、エマの手から弓が落ちた。

190224


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