09


サマーバケーションが終わって、こんなことになるなんてまさか、思わないじゃないか、あられもない姿になるとか。


少し体調が悪い気はしていた。熱っぽくて、体の動きに問題はなかったから、登校したのに、それこそが間違いだった。


『(っくそ、なんだって、こんな…)』


だるいし、暑い。
なんだこれ、と机に突っ伏してしまっているのは許してほしい。
もうすぐ移動教室だとかそんなこと考えているよゆうがない。いってられない。動くのがそもそも億劫である。


「エマちゃん大丈夫?」
『あんまり…、私、保健室いってくる。』


京子に心配そうに声をかけられたが、いつも通りの返事ができるわけもない。なんとか立ち上がろうとしたが「エマ?」と少し遠くから彼の声が聞こえた瞬間、かくんって、それこそ腰が抜けた。
ドクドクと変に心臓が動いて、いたいと感じるほど。胸を押さえてしまったのは、とっさだった。


「ど、どうしたエマ!具合わりぃのか!!」


バタバタと駆け寄ってきてくれた彼の香りがさらに胸を苦しくさせる。じんわりと涙がにじむ、

なに、これ、なにこれ!!


『たけし、くん。』
「無理すんなって、とりあえず保健室だな! た、てないか。」


「わりぃ抱くぞ」っていって、数日ぶりに横抱きにされた。ひゅぅっと喉がなって息が苦しい。過呼吸に近い感じじゃないかって思うが、涙がぼろぼろでるし苦しいし最悪である。
私のあまりの様子に武くんが慌て、回りの生徒が何事かと振り替える。なにこれ罰ゲームかな!!


「失礼します!」


ばーんっと壊れるんじゃないかってほど勢いよく横開きの扉を開いた武くんに「うるっせぇぞ!男はみねぇ!」ってなんだか聞き覚えがある声が聞こえた。
そんなの無視して入り込んで「わりぃな!ベット借りるぜ!」と武くんは総スルーである。

優しく下ろされて、布団をかけられた。
武くんの香りが離れてしまって、寂しいと感じる私は末期か。手を伸ばしたのはほぼ無意識で、でもそれを優しく握り返してくれて、じんわりと暖かさに涙がまたにじむ。


「気がつけなくってわりぃ。大丈夫だからな?」


暖かい。武くんはきっとこういうヒト。だから、あの日も私を助けてくれた。「ちと休めよ」なんて頭を撫でてくれて、また涙出てくる。


「エマ? …あぁ。なるほどな」
『…シャマル?』


けれど聞こえてきた声に、再び目を開けた私は悪くない。
カーテンの隙間からこちらを覗いている男には見覚えがある。なぜ、この男がここにいるのか。そういえば保険医が変わったって誰かいってた。


「なんだ、シャマル。エマのことしってんのか?」
「まぁ、エマっていうよりはエマの兄貴だが…まぁ、ずいぶんなやつに引っ掛かったなお前。」
『やっぱり、モスキート…!』


すべての現況はこいつか。マジで蜂の巣にしてやりたい。ヒトがこんなに苦しんでるのにどうしてこの男はにやにやしているんだ。本当に出ていけ。


「安心しろ。小一時間その状態でいればよくなる。お前、エマのそばにいてやれ」
「え?いいっすけど」
「んじゃ、俺はちょっとはずすからな。」


「ごゆっくりー」なんて間抜けな声。え、この状況で二人っきりなの?


「まぁ、とりあえずエマねちまえよ。俺もそばにいてやっから。」
『え、え、だって、授業』
「シャマルがいってたろ?その状態でって。だから俺も一緒にいるから。ほら、ねちまえ」






目を冷ましたらすっかり体はよくなっていて、一方武くんはベットに突っ伏して爆睡していた。手は繋いだままで、キュンっとしてしまったのは仕方ない。


「お、起きたエマちゃん。」
『シャマル。』
「まさか、お前が「恋患い病」にかかっちまうとはなぁ、恋してんだなぁ」
『は?』


怒りとそのたもろもろが混ざっていたが、シャマルの言葉に、固まる。恋患い、病?なんだそりゃ。と思ってシャマルを凝視する。


「ボンゴレの坊主にはドクロ病がいっちまうし、わりぃな」
『え、まって恋患い病ってさっきの症状のこと?』
「あぁ、特効薬がすぐそばにいてくれただけよかったな。」


特効薬。
それを聞いて凝視してしまったのは手を握ってくれている武くんだ。


「この病気の特効薬は恋する相手がそばにいることだ。まぁそもそも誰かに恋してなければ発症もしないんだがな」


あぁ、私は本当に武くんに恋をしているのか。
なんて、心が少し暖かくなったのはそういう乙女心だ


190216


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